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社会保障については、こんな取材をしてきました。 [デモクラTV編成局]

 すっかりご無沙汰してしまいました。

生活保護を利用している人たち、過去に利用していた人たちの「顔が見える」こと」を目指して創刊された『はるまち』という雑誌があります。その第二号に寄稿した文章を、一部加筆訂正の上、ここに転載することにします。目を通していただければ幸いです。

 生活保護は日本国憲法第25条を具現化した制度として、困窮に陥った人々のセーフティーネットとなってきましたが、同時に、保護費総額を減らそうとする政府や自治体の攻撃に常に晒されてきました。申請しようとする人を役所の窓口で追い返したり、極めて不十分な受給しか許さなかったりで、結局は必要な人々に行き届かない、行き渡らない不十分な制度でもあったのです。この臨時国会で改悪されたことにより、いよいよ申請しづらい制度に貶められようとしています。受給者に対する差別さえ、今以上に助長されかねない。そんなときに、『はるまち』がはたす役割は小さくないと私は思います。みなさまも是非、『はるまち』支援の輪に加わっていただければと思います。 

http://www.istones.jp/archives/53

 

 私がテレビなどで報道の仕事に従事するようになったのは、日本がバブル景気に向かう起点となった八五年のことでした。当初、テーマは様々でしたが、九六年頃からは自然に貧困やその周辺にある問題に取り組むことが増えていきました。バブル崩壊と平成不況のただ中で、国民年金、国民健康保険といった福祉国家を支えるはずのサブシステムが急速に機能不全に陥り、あるいは空洞化させられ、様々な悲劇も起こり始めていました。

 国民年金の保険料は収入にかかわらず一定ですから、しばしば「人頭税」として牙をむく。収入が下がって、保険料を払えない人たちがたくさんうまれ、無年金の予備軍になる。そのうえ、四〇年休まず支払っても月に六万円程度の年金しかもらえないから、払える人も払いたくない。国民皆保険の建前ですが、支払いを拒否する人たちは、「国民年金は掛けてない」と表現してましたね。「割の合わない年金保険商品」と見られていたわけです。

 国民健康保険もどんどん貧しい人に厳しい保険料体系になっていきました。保険料支払いが滞れば期間の短い短期保険証にします、一年未納となったらそれも取り上げ、代わりに資格証を出しますから、医療機関の窓口ではいったん医療費の全額を払って下さいね、差額は役場に来ればお返ししますが、保険料未納分に充ててもらうことになりますよと。東大阪市は厚労省が国保料徴収のモデル自治体のようにみなした自治体で、昼間から市長を先頭に未納世帯を廻って徴収に務める有り様でした。(追記:この市長はその後、親しい知人女性の虚偽の住民登録と、自身の厚生年金詐欺容疑で逮捕されました。)役場の窓口も強硬で、取材中、担当者が未納者に向かって「この前やってきた夫婦、保険証出してくれなかったらここで死ぬって言うから、どうぞ死んで下さいと言ってやったんだ」と言い放ったことがありました。その音声を記録してテレビの全国放送で流したので、ご記憶の方もあるかもしれませんが、そんな調子だったのです。その後、日本全体が、実に無慈悲な方向に変わっていきました。

 生活保護については、北九州市がさながら国のモデル自治体のようでした。あるとき、病気で職を失った元タクシー運転手の男性を取材しました。一人暮らしでした。生活保護の申請をすると、まだ五十代だから働けと門前払いをくう。具合が悪くても病院に行けず、路上で倒れて病院に担ぎ込まれるとやっと生活保護の医療扶助が出る。やがて退院せざるをえなくなって自室に戻りますが、当然、医療扶助は打ち切られる。仕事はできないから国保料が払えず、保険証を交付してもらえない。また倒れ、入院して医療扶助。これを繰り返して数年後、何度目かの入院の末に意識不明となり、やがて息を引き取りました。国も市も、彼が死ぬのを待っていたのだなと思いました。取材とはいえ、自分の無力さに落ち込みました。(追記:その後、北九州市では、似たケースで餓死者を出し、日本中の憤激を呼びました。)

 社会保障全般に大ナタが振るわれるのはこれからのようです。なんとか止めなければいけない。安倍政権が進めようとしている改憲路線の一つの現れ、そんなふうに理解しています。


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