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3月24日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150324】

【はじめに】

今朝の各紙は1面で、沖縄県の翁長雄志知事が、「辺野古作業停止を指示」との大ニュースを伝える。知事は、安倍政権が強行している辺野古での新基地建設を前提したボーリング調査で、許可されていない区域でサンゴ礁を損傷している可能性が高いと判断、知事の権限に基づき、現場海域での全ての作業を七日以内に「停止」するよう、沖縄防衛局に指示した。指示に従わない場合、「岩礁破砕許可」を取り消す。政府は粛々と工事を続けると言い張っているが、知事は法廷闘争も辞さないとしている。

1面トップの見出しは、文言も全紙ほぼ同じ、辺野古周辺の立ち入り禁止区域などを図示している点も各紙共通する。翁長氏の写真もみな載せているが、《読売》だけが翁長知事と菅官房長官が向かい合った形のコラージュになっている。「翁長知事が作業停止を指示し、政府はかまわず工事を続行すると言っている」というところまでをニュースと考えてのことだろうか。それは一つの選択だが、裁判でも起こさなければ対抗できない、都道府県知事の独立した強い権限に敬意を払っておれば、官房長官の顔写真など載せずとも成立するニュースであることは明白だ。政府に与えられた猶予は七日間。指示が無視され、工事が続行されていれば、それは明白な違法行為を政府が行っていることになる。法的に、安倍政権は守勢に立たされている。

いよいよ決定的な段階に差し掛かった辺野古の問題は、新聞にとっても、リトマス試験紙の役割を果たしているということに、そろそろ気がつかなければいけないだろう。各紙はいったい、誰の立場に立とうとしているのか。そんなことが自然と意識にのぼってくる3月24日の<uttiiの電子版ウォッチ>、ご覧ください。

*4月1日から、この<uttiiの電子版ウォッチ>はまぐまぐ!のメルマガに移行します。

メルマガID   :0001652387

メルマガタイトル:uttiiの電子版ウォッチ

対応機器    :PC・携帯向け

表示形式    :テキスト形式

発行周期    :毎週 月・火・水・木・金・土曜日

創刊日     :2015/4/1

登録料金    :324/月(税込)

お申し込みは、http://www.mag2.com/m/0001652387.html まで。

【ラインナップ】

1.   昔からどこか冷たいところのある新聞だった?

2.   コラージュが覆い隠すもの

3. 官房長官とは全く逆の意味で、「日本は法治国家だ」!

4.  琉球新報の記事が載る東京の新聞。

1.昔からどこか冷たいところのある新聞だった?

【朝日】の1面トップの見出しは、「辺野古作業停止を指示」。《朝日》の特徴は、キーワードとして「埋め立て承認」と「岩礁破砕許可」に解説を付けた点だ。今回の「停止指示」は、沖縄県が仲井眞知事時代に出した「岩礁破砕許可」に条件が付けられていて、「公益上の事由により県が指示する場合は従わなければならず、条件に違反した場合には許可を取り消すことがある」と書かれていることを根拠に、知事が出したものだ。さらに、前任者仲井眞知事による「埋め立て承認」の法的瑕疵について検討を続けている第三者委員会の結論は7月までに提出される予定で、その内容次第では、そもそもの「埋め立て承認」が取り消されることもありうる。まずは、再開されたボーリング調査の過程で許可水域外にコンクリートブロックが投下され、サンゴ礁を傷付けている可能性が高いと分かった段階で、知事は第一段階の動きに出たということなのだ。今回の知事の指示はまだまだ序の口。次は基地建設そのものを否定する法的措置が控えている。そのことが明瞭になるという意味で、《朝日》の解説姿勢は、読者の正確な理解に資するものと言って良い。

関連記事は三つ。2面「時時刻刻」では、翁長知事の論法は、県による海底調査のための作業停止指示に従わなければ許可そのものを取り消すというやや強引な論理で、裁判になった場合に「県側に必ずしも勝算があるわけではない」とする、いかにも政治記者らしい書きぶり。官邸の対応についても記されていて、菅官房長官が「この期に及んで」という言葉を4回(他紙によれば5回説も)も繰り返し、「我が国は法治国家だ」と発言したようだ。また、安部、菅両氏が翁長知事の再三の求めにもかかわらず面会さえ拒んでいることに関して、「反対の意思を表明するセレモニーに、お付き合いすることはない」とし、沖縄振興策への「影響」を匂わせつつ、翁長氏の「求心力が落ちるのを待つ戦略」だという。「翁長氏には法廷で会えばよい」と言い放った官邸高官がいたようで、このエピソードは官邸の雰囲気をよく伝えている。他に14面には社説が「沖縄の問いに答えよ」と政権の問答無用スタイルに苦言を呈し、38面には反対派が「大きな一歩」と受け止めていることが書かれている。

《朝日》の書きぶりには、どこか冷たさを感じる。翁長氏の論法の弱点は指摘する一方で、安倍政権の奉じる「海兵隊の抑止力」といった幻想には一言の批判もない。沖縄県民の多くが信じていない、基地「移設」というファンタジーをそのまま真実のように扱う姿勢。こうした点は、《東京》を除く全ての本土メディアが批判されなければならない点だが、今朝の《朝日》の冷たさは罪深いように思う。安倍政権の行動の一つ一つに染みわたっている「中央の傲慢さ」は、そのまま多くのメディアにも当てはまるということを、またしても再確認させられた思いだ。

2.コラージュが覆い隠すもの

【読売】1面トップの見出し。「辺野古作業停止を指示」。この文言は《朝日》《毎日》と全く同じ。まあ、他に書きようがないとも言える。冒頭に記したように、写真は、翁長知事と菅官房長官が向き合う形のコラージュになっている。他紙にはない、際立った《読売》の特徴と言って良い。記事の量は他紙に比べて少なく、関連記事も置かれているが3面のスキャナーで、政府側の「対抗策」を色々並べているのみ。翁長知事については「知事選で全面支援を受けた移設反対派からの強い要求に応えるため」とか、「政府が翁長氏の揺さぶりに応じず、移設に向けた作業を着々と進めていることへの危機感」などと推測を重ね、自民党関係者による「政治的パフォーマンスに過ぎない」との発言も投げつけている。

コラージュについては色々な受け取り方があるだろう。確かに、知事と官房長官は「がっぷり四つ」のところがある。仲井眞前知事の「埋め立て承認」を取り消す段取りが整うまでに、工事が進捗してしまうのをどうやったら抑えられるか。翁長氏も様々苦慮しながら、今回の岩礁破砕許可取り消しに至る作戦を考えたのだろう。これから始まる、沖縄県と政府との「闘争」を考えれば、コラージュには意味がある。だが、沖縄県知事と官房長官、両者の対立を表現するコラージュによって、逆に見えにくくなっているものがある。沖縄県民多数の意志だ。名護の市議選、市長選、県知事選、衆議院選で県民はこれ以上ないくらいハッキリした結論を出した。その知事に安倍政権は会うことさえ拒み、さらに、権限に基づいて出した指示にも従わないとなったらどうだろうか。筆者は、法廷闘争云々の前に、もっと深刻な事態が出来する可能性が高いと考える。今回の指示が仮に無視されてしまった場合、沖縄防衛局や海保、警備会社の行動は、全て違法の誹りを免れない。そのときに県民がどのような行動を起こすか。大田昌秀元知事が昨年のインタビュー(『デモクラTV』「新沖縄通信」による取材)で語った言葉が忘れられない。大田さんは新基地建設についてこう言う。「今、政府が強行したらですね、命を掛けても抵抗するという人たちが出てくるわけですよ。ですから、そういった面で血を見る騒ぎになると、かつてのコザ騒動どころじゃなくてですね、沖縄中に怒りが満ちていますから、行政がコントロールできないように事態になりかねないと、それをどういうふうにして防ぐことが出来るかというと、所詮は、辺野古に作るのをね、断念するしかないと思うんですよね。」

 紙面を見る限り、《読売》にこのような県民の姿は全く見えていないと判断せざるを得ない。

3.官房長官とは全く逆の意味で、「日本は法治国家だ」!

【毎日】ももちろん1面トップだが、関連記事が3面の「スキャナー」にあり、ここでなかなか読み応えのある解説がなされている。ある与党県議の話として、「知事は政府が沖縄の要請を受け入れないことを想定しながら、行政の長として手順を踏んできた。今日の会見で県内外に知事の本気度が示せた」と知事を評価し、さらに「日本は法治国家だ。政府の姿勢を国内外が中止しており、官房長官が言うように移設作業が粛々と進むとはまったく思わない」としている。

この県議会議員のこのコメントは他紙には見られない。官房長官が頻りに「日本は法治国家だ」と会見で発言していたことへの当て付けも入っていて、切れが良い。また、沖縄大学の仲地博学長が「沖縄県民を支援する声が国民にどれだけ広がっていくかで、政府の姿勢は変わってくる」という話、法政大学名誉教授の五十嵐敬喜氏が「政府概説を強行すれば現場は沖縄県民の強い抗議に囲まれる。移設作業はさらに困難になるだろう」との見解も重要な側面を指摘している。

4.琉球新報の記事が載る東京の新聞。

【東京】は「辺野古作業の停止指示」と題した一面記事に、他紙と同様の図解に加え、岩礁破砕に関する沖縄県と政府の主張を対比した表、さらに、大浦湾で撮影された海底にめり込むコンクリート製ブロックの写真を添えている。そして後半の中見出しは「政府強硬 法廷闘争も」としている。他紙と比較して、明らかに《東京》の紙面はバランスがとれていて、しかも必要な情報が過不足なく入っている。関連記事は2面と30面、さらに社説と続く。

2面記事は「翁長氏「腹は決めている」」との見出しで、知事との一問一答を左側に、右側は、防衛省関係者に対する取材などで、裁判を見据えたこの先の見通しを語らせているが、一週間の猶予を与えたことについての県幹部の話が興味深い。「国に最大限配慮したものだ。知事は『それでも県の指示を聞かないなら取り消す』という形を作ろうとしている」という。取材が行き届いているなあと思ったら、なんと末尾に(琉球新報取材班)とある。《東京》は琉球新報と記事の交換をしているので、こうした芸当が可能であり、地方の一つである沖縄の声、沖縄県民の声を反映しやすい。30面は、辺野古で座り込んでいる市民らの様子を伝えている。キャンプシュワブゲート前では集会が開かれ、「闘いに応えてくれた」と知事の判断に沸いたという。また会見の時の知事の様子、その日の辺野古海上でも市民らのカヌーが一時海保によって拘束されたことなどを伝える。これらも、おそらくは琉球新報の力による記事ではないかと思われる。こうした問題の際に、必ず市民、住民の側の視点を欠かさないというのは、メディアにとっては決定的に重要なことだと思う。《東京》は、沖縄と311後の福島に対して、差別されてきた地域として特別に篤く情報を取る体制を作り上げている。特に沖縄については、琉球新報との提携によって、一段高い記事内容のリアリティーを保っている。了。


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