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年金積立金の運用損 [uttiiの電子版ウォッチ]


こんにちは。

昨日の《朝日》は「グッジョブ」でした。例の、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が安倍政権下でポートフォリオを債券から株に大きく傾斜させたため、15年度、5兆円以上の運用損が出たという話。1面トップでした。一昨日、厚労省に報告されたものの、国民への公表を参院選後の29日まで延ばすという、姑息と受け取られても仕方がないような政権の対応があり、一部に怒りを呼び起こしていました。《朝日》は一昨日の段階で「5兆数千億円」という数字をつかみ、“先行報道”したということです。

「権力が報道されたくないと思っていることを報道する」という、ジャーナリズムの鏡のような記事。

各紙、当然後追いしなければならないはめになりましたが、さて、どうなったか。

《読売》と《毎日》はそれぞれ2面に中くらいの扱いの記事を載せ、《読売》は政治面にも関連記事を置いています。《東京》は1面トップに持ってきました。各紙、後追いを含めて共通に伝えることになり、参院選の大きな争点の1つに急浮上です。

重要なテーマですので、各紙の記事について紹介とコメントをしておきましょう。

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【目次】

    ■総ては「株安」のせい■《読売》

    ■株価押し上げ効果を狙った首相官邸■《毎日》

    ■稲田さん!40兆円はウソでしょ■《東京》

    ■与野党応酬のテーマに■《朝日》


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総ては「株安」のせい

【読売】は2面と関連記事4面。見出しは以下の通り。

年金運用損5兆円 株安響く
年金運用損巡り応酬
与野党 選挙戦へ影響大きく

(uttiiの眼)

《読売》が強調するのは、運用損は「株安」の影響だということ。悪いのは「アベノミクス」でも「ポートフォリオ」でもなく、「株安」。株安のせいだと言いたいらしい。

2001年度以降の累積の収益は45兆円であり、自民党が政権を奪還した12年以降、アベノミクスの影響で株価が上昇し、収益を積み重ねてきたが、15年以降は株安で損が出たという「認識」。

一応、《読売》も、14年10月に「ポートフォリオを変更し、国内株式と外国株式をそれぞれ25%に引き上げた。株価の影響は受けやすくなった…」とは書いているが、このポートフォリオについての批判はスルーしてしまい、「GPIFは現在の資産構成を維持する方針だ」と逃げている。

関連記事の方は政治面。年金積立金の運用損についての記事と、その政治的影響の記事を別けている形。

紹介されているのは、民進党の枝野幹事長が「株価をつり上げるため、(年金を)株に投資するイレギュラーなことを強引に進めた責任は免れない」との批判、公表日が例年の7月上旬ではなく29日であることについての「姑息なやり方」との批判も。また、政府与党側は、安倍政権になってから38兆円の運用益を出している、との田村憲久前厚生労働相の反論、石原経済再生相による「10年20年でどれくらいの運用益が出たかを見ればいい」とのコメントを載せる。

全体に、《読売》にしては公平な取り扱いになっているが、2面記事で「株さえ高ければ」という姿勢に終始しているのは、いかにも《読売》。この先の世界経済の不透明感と円高による企業収益の悪化などを自ら指摘しているにもかかわらず、ポートフォリオ変更の責任を問う姿勢は全く見えない。

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株価押し上げ効果を狙った首相官邸

【毎日】は2面に記事。見出しを抜き出すと…。

年金積立金 損失5兆円
株式運用拡大が影響
15年 今年度さらに悪化も

(uttiiの眼)

見出しに「株式運用拡大が影響」とあるとおり、ポートフォリオ変更の政治的責任を問う姿勢を明確にしている。また、本文のリード部分には「15年度末に比べ株価はさらに下落しており、厳しい運用状況が続きそうだ」と先行きの困難も指摘。

本文には、サラッと「株価の押し上げ効果を狙う首相官邸の意向などを受け、14年10月に資産の構成割合を変更」と、ポートフォリオ変更の背景に政権の「株価押し上げ」という狙いがあったと書いている。しかし、これは安倍政権が、そのまま「その通り」と認めるわけにはいかない内容だろう。年金積立金という、国民からの預かり物を株式相場の放り込み、危険にさらすことによって政権支持率安定化装置の役割を果たさせてきたという、安倍政権に対する強烈な批判を含んでいるからだ。

安倍政権としては、「ポートフォリオの変更は、飽くまで、年金給付に必要な利回りを確保するため」でければならないだろう。

もちろん、そんなことを信じる人はほとんどいないだろうが。

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稲田さん!40兆円はウソでしょ

【東京】は1面トップで大々的に報じている。「明日を選ぶ 2016 参院選」という特集の位置づけだが、中身は《朝日》の後追いにいくつか書き足した形。

(uttiiの眼)

《朝日》に抜かれた、という昨日の事情からすると、なかなか1面トップには載せにくく、「照れ」もあって、《毎日》や《読売》のように目立たないところにこっそり書き込むものだが、《東京》はことの重大さを優先したのだろう。それはそれで、勇気ある選択と言える。

《読売》が、総てを「株安」のせいに還元したような書き方をしていたことをご記憶だと思う。《東京》は「GPIFが資産運用の基準として株式の比率を増やした結果、損失が膨らみ、5年ぶりの赤字となった。株式比率を上げたことの是非が、参院選で争点に浮上している」として、明瞭に、ポートフォリオの変更を問う姿勢。《毎日》、そして《朝日》とも共通する。

《東京》は自民党の稲田政調会長が「安倍政権になって40兆円の利益が出た」と言っているのは、ある期間に出た38兆円の利益を念頭に置いたものであり、実は、その38兆円の中には、安倍政権が誕生した12年12月26日の直前、12年10月から12月の分まで含み込まれていること、稲田氏は、水増しした数字を主張しているということを明らかにしている。差し引くと、実際は33兆円のものを40兆円と言っていることになる。「政調会長」たる稲田議員の、こうした“どんぶり勘定”ぶりも、今後批判の論点として注目されていくかもしれない。

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■与野党応酬のテーマに■

【朝日】は、3面で昨日の続報を載せている。「2016 参院選」特集として。見出しは「年金問題 与野党応酬」。

(uttiiの眼)

ポートフォリオの変更が、安倍氏自らダボス会議で宣言したものであり、閣議決定された成長戦略でも柱の1つに据えられたものだということ。140兆円の半分が株式市場に流れ込み、株高を後押ししたことなどを記す。その上で…。

紹介されている与野党「応酬」の例を以下に。

前原誠司…「みなさんの年金は、世界全体の大きなリスクにさらされ続けている。それをみなさん(国民)に何の相談、報告もなく行っているのが安倍政治なのです。」

太田昭宏…「安倍政権になって38兆円の運用益が出ている。5兆円減ったというが、減っても30兆円以上の運用益がある。これは全部長期(で運用するもの)だから、今日どうなったかではない。」

野田佳彦…「よらしむべし、知らしむべからず。国民は何も知らなくていいと。都合の悪いことは後回しにして隠す」。

山井和則…「第2の「消えた年金」だ。」

小池晃「「消えた年金」ではない。首相による「消した年金」になりつつある」

萩生田光一…「運用実績は引き続き精査中だ。(公表時期が)恣意的に動くというような誤解があってはならないので、今年から日にちまで明確にした。参院選は関係ない。」

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【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

普段、土日の新聞は扱わないのですが、きょうは見過ごすわけにはいかないとの判断です。ご意見賜れば幸いです。

では、<uttiiの電子版ウォッチ>は、また次の月曜日に!

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