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年金積立金の運用損 [uttiiの電子版ウォッチ]


こんにちは。

昨日の《朝日》は「グッジョブ」でした。例の、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が安倍政権下でポートフォリオを債券から株に大きく傾斜させたため、15年度、5兆円以上の運用損が出たという話。1面トップでした。一昨日、厚労省に報告されたものの、国民への公表を参院選後の29日まで延ばすという、姑息と受け取られても仕方がないような政権の対応があり、一部に怒りを呼び起こしていました。《朝日》は一昨日の段階で「5兆数千億円」という数字をつかみ、“先行報道”したということです。

「権力が報道されたくないと思っていることを報道する」という、ジャーナリズムの鏡のような記事。

各紙、当然後追いしなければならないはめになりましたが、さて、どうなったか。

《読売》と《毎日》はそれぞれ2面に中くらいの扱いの記事を載せ、《読売》は政治面にも関連記事を置いています。《東京》は1面トップに持ってきました。各紙、後追いを含めて共通に伝えることになり、参院選の大きな争点の1つに急浮上です。

重要なテーマですので、各紙の記事について紹介とコメントをしておきましょう。

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【目次】

    ■総ては「株安」のせい■《読売》

    ■株価押し上げ効果を狙った首相官邸■《毎日》

    ■稲田さん!40兆円はウソでしょ■《東京》

    ■与野党応酬のテーマに■《朝日》


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総ては「株安」のせい

【読売】は2面と関連記事4面。見出しは以下の通り。

年金運用損5兆円 株安響く
年金運用損巡り応酬
与野党 選挙戦へ影響大きく

(uttiiの眼)

《読売》が強調するのは、運用損は「株安」の影響だということ。悪いのは「アベノミクス」でも「ポートフォリオ」でもなく、「株安」。株安のせいだと言いたいらしい。

2001年度以降の累積の収益は45兆円であり、自民党が政権を奪還した12年以降、アベノミクスの影響で株価が上昇し、収益を積み重ねてきたが、15年以降は株安で損が出たという「認識」。

一応、《読売》も、14年10月に「ポートフォリオを変更し、国内株式と外国株式をそれぞれ25%に引き上げた。株価の影響は受けやすくなった…」とは書いているが、このポートフォリオについての批判はスルーしてしまい、「GPIFは現在の資産構成を維持する方針だ」と逃げている。

関連記事の方は政治面。年金積立金の運用損についての記事と、その政治的影響の記事を別けている形。

紹介されているのは、民進党の枝野幹事長が「株価をつり上げるため、(年金を)株に投資するイレギュラーなことを強引に進めた責任は免れない」との批判、公表日が例年の7月上旬ではなく29日であることについての「姑息なやり方」との批判も。また、政府与党側は、安倍政権になってから38兆円の運用益を出している、との田村憲久前厚生労働相の反論、石原経済再生相による「10年20年でどれくらいの運用益が出たかを見ればいい」とのコメントを載せる。

全体に、《読売》にしては公平な取り扱いになっているが、2面記事で「株さえ高ければ」という姿勢に終始しているのは、いかにも《読売》。この先の世界経済の不透明感と円高による企業収益の悪化などを自ら指摘しているにもかかわらず、ポートフォリオ変更の責任を問う姿勢は全く見えない。

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株価押し上げ効果を狙った首相官邸

【毎日】は2面に記事。見出しを抜き出すと…。

年金積立金 損失5兆円
株式運用拡大が影響
15年 今年度さらに悪化も

(uttiiの眼)

見出しに「株式運用拡大が影響」とあるとおり、ポートフォリオ変更の政治的責任を問う姿勢を明確にしている。また、本文のリード部分には「15年度末に比べ株価はさらに下落しており、厳しい運用状況が続きそうだ」と先行きの困難も指摘。

本文には、サラッと「株価の押し上げ効果を狙う首相官邸の意向などを受け、14年10月に資産の構成割合を変更」と、ポートフォリオ変更の背景に政権の「株価押し上げ」という狙いがあったと書いている。しかし、これは安倍政権が、そのまま「その通り」と認めるわけにはいかない内容だろう。年金積立金という、国民からの預かり物を株式相場の放り込み、危険にさらすことによって政権支持率安定化装置の役割を果たさせてきたという、安倍政権に対する強烈な批判を含んでいるからだ。

安倍政権としては、「ポートフォリオの変更は、飽くまで、年金給付に必要な利回りを確保するため」でければならないだろう。

もちろん、そんなことを信じる人はほとんどいないだろうが。

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稲田さん!40兆円はウソでしょ

【東京】は1面トップで大々的に報じている。「明日を選ぶ 2016 参院選」という特集の位置づけだが、中身は《朝日》の後追いにいくつか書き足した形。

(uttiiの眼)

《朝日》に抜かれた、という昨日の事情からすると、なかなか1面トップには載せにくく、「照れ」もあって、《毎日》や《読売》のように目立たないところにこっそり書き込むものだが、《東京》はことの重大さを優先したのだろう。それはそれで、勇気ある選択と言える。

《読売》が、総てを「株安」のせいに還元したような書き方をしていたことをご記憶だと思う。《東京》は「GPIFが資産運用の基準として株式の比率を増やした結果、損失が膨らみ、5年ぶりの赤字となった。株式比率を上げたことの是非が、参院選で争点に浮上している」として、明瞭に、ポートフォリオの変更を問う姿勢。《毎日》、そして《朝日》とも共通する。

《東京》は自民党の稲田政調会長が「安倍政権になって40兆円の利益が出た」と言っているのは、ある期間に出た38兆円の利益を念頭に置いたものであり、実は、その38兆円の中には、安倍政権が誕生した12年12月26日の直前、12年10月から12月の分まで含み込まれていること、稲田氏は、水増しした数字を主張しているということを明らかにしている。差し引くと、実際は33兆円のものを40兆円と言っていることになる。「政調会長」たる稲田議員の、こうした“どんぶり勘定”ぶりも、今後批判の論点として注目されていくかもしれない。

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■与野党応酬のテーマに■

【朝日】は、3面で昨日の続報を載せている。「2016 参院選」特集として。見出しは「年金問題 与野党応酬」。

(uttiiの眼)

ポートフォリオの変更が、安倍氏自らダボス会議で宣言したものであり、閣議決定された成長戦略でも柱の1つに据えられたものだということ。140兆円の半分が株式市場に流れ込み、株高を後押ししたことなどを記す。その上で…。

紹介されている与野党「応酬」の例を以下に。

前原誠司…「みなさんの年金は、世界全体の大きなリスクにさらされ続けている。それをみなさん(国民)に何の相談、報告もなく行っているのが安倍政治なのです。」

太田昭宏…「安倍政権になって38兆円の運用益が出ている。5兆円減ったというが、減っても30兆円以上の運用益がある。これは全部長期(で運用するもの)だから、今日どうなったかではない。」

野田佳彦…「よらしむべし、知らしむべからず。国民は何も知らなくていいと。都合の悪いことは後回しにして隠す」。

山井和則…「第2の「消えた年金」だ。」

小池晃「「消えた年金」ではない。首相による「消した年金」になりつつある」

萩生田光一…「運用実績は引き続き精査中だ。(公表時期が)恣意的に動くというような誤解があってはならないので、今年から日にちまで明確にした。参院選は関係ない。」

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【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

普段、土日の新聞は扱わないのですが、きょうは見過ごすわけにはいかないとの判断です。ご意見賜れば幸いです。

では、<uttiiの電子版ウォッチ>は、また次の月曜日に!

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惨劇の治療室 [uttiiの電子版ウォッチ]

こんにちは

私、耳鼻咽喉科が苦手です。

「はい。口を開けて~」と言われてその通りにすると、次の瞬間、あの恐ろしいステンレス製のへらのようなものが口に中に。喉の奥を見るためなのだと思いますが、へらの先で舌の奥をグイッと押される、その段階でもうダメ。耐えられず、ウゲーっとなってしまいますよ。

似たようなことは歯医者さんでもあって、特に「型をとる」ときがヤバイです。ピンク色でドロドロの印象材を盛ったトレーが用意され、これを口の中に突っ込まれるんですが、その印象材(アルジネートとか言いましたな…)が体温で固まるまでに3分、その間に、喉の奥の方に垂れてくるんですよ。しかも、上顎と下顎の2回。どうにも耐えられず、「ウゲー」となって大声を出してしまったことがありました。「ウゲ、ウゴゴ、グワグワ、オエエーッ!」私の叫び声が部屋全体に響き渡り、さながら「惨劇の治療室」みたいな感じになっちゃって…。

その時の先生がE先生。先生は非常に優秀な歯科医で、私が診てもらった先生の中でピカイチのかた。「ゲー」事件のことがあったので、「型どり」のときは非常にナーバスになっておられます。つい先日も…。

まずは先生、印象剤の量をできる限り少なくするところから、歯科助手さんに的確な指示を出しておられます。盛りすぎると、喉に垂れてくるからですね。そして、トレーを口の中へ。先生は私を諭すように「内田さん、上顎からやりますよ。これが済めば、下顎の方はずっと楽ですからね」(お、なるほど。難関は最初にクリアしてしまえということか!)「鼻からゆっくり息を吸って、深呼吸~、はい、ゆっくり吐いて~」。先生もご自分の指示に合わせて深呼吸。椅子はかなり倒して使うことが多いのですが、私の「型どり」のときだけは背中を立てた状態。そして、緊迫の3分間が始まりました。1分ちょっとたったぐらいのときに計算外の事態発生。先生の素っ頓狂な声が響きます。

「えっ、タイマー付けてないの?」

歯科助手さんが付け忘れていたようです…。

(ちょっ、ちょっと待ってよ!ということは、3分どころか、5分くらいやらないといけなくなるのか…なんか、ちょっと垂れてきたような気がするなあ、ああ、うぐぐ、深呼吸、深呼吸…)

というようなアクシデントはありましたが、ギリギリ、なんとかセーフ。長めの3分間が終わり、「うまく採れましたよ」とお褒めの言葉があり、一段落。E先生は「ちょっと、休憩しましょうか…」と私のことを気遣って下さいますが、いやいや、どんどんやっちゃって下さいと言いかけようとして気が付き、言葉を飲み込みました。

「休憩」が必要なのは私ではなく、E先生の方!

今回は目出度く、上顎でも下顎でも「惨劇」は起こらず、無事に済みましたが、E先生、もしかしたらトラウマになってるんじゃないかなあと心配になってきた、きょう6月28日の<uttiiの電子版ウォッチ>、ご覧下さい。

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 以上は、6月28日に配信した<uttiiの電子版ウォッチ>の冒頭部分です。土曜・日曜・祭日と新聞休刊日の翌日を除き、毎日配信している新聞4紙を読み解くメルマガです。【ショートバージョン】は午前中に、【フルバージョン】は当日中に配信できるよう、作業を進めています。続きは<uttiiの電子版ウォッチ>でどうぞ。有料のメルマガ(一ヶ月324円)ですが、初月分は無料で読めます。是非お試しを! 

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お散歩山に赤とんぼ群れ飛ぶ6月 [uttiiの電子版ウォッチ]

こんにちは。

噂の“お散歩山”は、刻刻と表情を変える、美しい里山です。今時分の主役は赤とんぼ、と言ったら、意外に思われるでしょうね。

「そりゃ、秋だろ?」

などと訝しげなお声が聞こえてくるようですが、まさに今のシーズンが赤とんぼのピーク。まあ、赤とんぼと言っても、「ナツアカネ」の方で、「アキアカネ」ではありませんが。

この時期のナツアカネの体色は、「赤とんぼ」というよりは「黄とんぼ」に近い。譬えて言えば、“空飛ぶ芋けんぴ”。お散歩中、気が付くと、ホバリング中の無数の“芋けんぴ”に取り囲まれているのです。個体数が多いからですかね、彼ら彼女らは、まるで警戒心が薄く、犬を引くリード(手綱)に留まったりしている。虫が嫌いな人には耐えがたいかもしれませんが、私のような者には天国にいるかのような嬉しい気分…。何よりありがたいことに、この状況、絶対に蚊に刺されないのです。ヤブ蚊にとっては絶望的な状況で、人の血を吸うために飛び上がったりすれば、間違いなくナツアカネの餌食となってしまいます。私たちは守られているんですね、とんぼに。

それにしても、不思議なのは、ナツアカネたちは、どこでヤゴ時代を過ごしたのか、ということです。近くに思い当たる水辺がないので、ひょっとしたら少々遠くからやってきているのかなと思い巡らすのも楽しい、きょう6月27日の<uttiiの電子版ウォッチ>、ご覧下さい。

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 以上は、6月27日に配信した<uttiiの電子版ウォッチ>の冒頭部分です。土曜・日曜・祭日と新聞休刊日の翌日を除き、毎日配信している新聞4紙を読み解くメルマガです。【ショートバージョン】は午前中に、【フルバージョン】は当日中に配信できるよう、作業を進めています。続きは<uttiiの電子版ウォッチ>でどうぞ。有料のメルマガ(一ヶ月324円)ですが、初月分は無料です。 

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春の嵐 [uttiiの電子版ウォッチ]

春の嵐

安倍政権の屋台骨を揺るがす出来事が次々に起こっている。

昨日は、イクメン議員として話題を提供したばかりの宮崎謙介議員が不倫疑惑で議員辞職し、国の除染基準である年間1ミリシーベルトに「科学的根拠はない」と言い放っていた丸川環境相が発言を撤回、謝罪した。若い議員や閣僚だけではない。参議院議員会長の溝手顕正議員は宮崎謙介議員の不倫問題に触れて、「羨ましい人もいるんじゃないか」と軽口をたたき、弁明にあたふたしている。

今週に入ってからは、TPP署名式に和服で出席した内閣府の高鳥副大臣が、ブログで「ブルーチーズは美味しかったです」と書き込んで国内畜産農家の感情を逆なでし、またニュージーランドでの警備態勢を写真付きで暴露してしまい、顰蹙を買って謝罪に追い込まれた。岩城法相は法制度についての基本的な質問に答えられず、国会で何度も立ち往生。そして沖縄北方問題担当の島尻大臣は、北方領土の「歯舞諸島」が読めず、会見で「なんだっけ…」と言葉に詰まり、官僚が、かつての船場吉兆の女将よろしく、大臣に耳打ちしてその場を取り繕う始末。

それぞれ重要な問題を含んでいるものの、「お笑い安倍内閣」的な出来事が頻発している。

いや、笑い事ではない。

思い返せば、その兆候は、週刊文春が甘利経済再生担当大臣の不明朗な現金授受と口利き疑惑を報じ、甘利氏が大臣辞職に追い込まれた先月末がターニングポイントだったと言えるかもしれない。

政権と与党は、甘利氏自身の辞職でケリを付けたかったのだろうが、追及はいよいよこれからだ。政官の癒着を含め、自民党支配の汚辱にまみれた部分がやがて明るみに出されていくだろう。

それでも、最大の問題は、経済の先行き。政治化した黒田日銀が3発目の「バズーカ」として放ったマイナス金利導入策は、株高と円安を招くはずだったが、世界経済の先行き不安などを背景とする株価の下落と円高の亢進を止めることさえできず、むしろ促進してしまった可能性がある。だとすれば大失敗。しかも、アベノミクスには有効な手立てが何一つ残っていないことを自ら暴露してしまったようなものだった。あとは世界大で飛び回る投機筋に、私たちの「虎の子」である年金積立金が食い荒らされるのを、ただ傍観していることしかできないのか。

宮崎議員の辞職により、4月は補選の月となった。京都3区と北海道5区の衆院補選は、夏の参院選の文字通りの前哨戦として、安倍内閣の残された寿命を占う、格好の試金石となっていくはずだ。了。

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 以上は、2月13日に配信した<uttiiの電子版ウォッチ>の一部です。日曜祭日を除く毎日配信している新聞4紙を読み解くメルマガですが、【土曜バージョン】の冒頭部分をご紹介しました。
 
続きは<uttiiの電子版ウォッチ>でどうぞ。有料のメルマガ(一ヶ月324円)ですが、初月分は無料です。
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3月31日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150331】

【はじめに】

 いよいよ、<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版)をお届けする最後の機会となってしまいました。年度末の331日、みなさまお忙しいこととは思いますが、<uttiiの電子版ウォッチ>、お楽しみいただければ幸いです。

昨日に続き、1面トップのテーマは各紙バラバラです。《朝日》が、辺野古の新しい事態について、《読売》は南海トラフ地震の際の政府計画について、《毎日》は、ヤフーが検索結果の削除を求められたケースの新基準を発表したニュース、《東京》は福島第一原発での労働問題について。

*4月1日からこの<uttiiの電子版ウォッチ>はまぐまぐ!のメルマガに移行します。

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【ラインナップ】

1.    今頃になってようやく「移設」ではなく「新基地建設」との意見を紹介。

2.    喉まで出掛かっている「国家緊急権」。

3.    もとより「表現の自由」は絶対ではないけれど。

4.    ブラック企業、その名は東電。

今頃になってようやく「移設」ではなく「新基地建設」との意見を紹介。

【朝日】は「沖縄知事、国の姿勢批判」との大見出し。もちろん、翁長知事が工事の中止をさせた指示について、昨日、農水大臣がその効力を停止する決定をしたことに対する批判だ。当初、30日までに停止しなかった場合には「岩礁破砕許可」そのものを取り消すとしていた翁長知事は対応を明言しなかったが、「国が申し立て、国が審査する対応は公平公正に行われたのか理解できず残念だ」と国の姿勢を批判した。関連記事は3面の「時時刻刻」と38面の「止まらぬ移設 沖縄焦燥」の記事。「時時刻刻」は翁長知事が模索する「次の一手」を様々推測、「訴訟合戦は避けられない」との見方を紹介。38面は現地でこの問題に関わる様々な人々の反応などを記す。「辺野古は『移転』ではなく『新基地建設』だ。ごまかさないでほしい」という声を今頃紹介している。《東京》などは以前からそのような論点が常識だが、《朝日》は政府の言うとおり、「移設」と表現している。

uttiiの眼)予想通りの展開ではあるが、あらためて、このケースで安倍政権が行政不服審査法を使うことの不条理を強く感じる。類似のケースはやはり沖縄辺野古の問題で、2011年1月に防衛局が生物調査を行おうとして名護市に許可されず、農水大臣に審査を請求したことがあった(昨日30日付け《朝日》朝刊3面と31日付け3面「時時刻刻」)。沖縄からすれば、「またか」という感じだろう。民意に基づく沖縄側の行政行為を、無力化あるいは無化するために用いられる「法的な」常套手段ということになろうか。気になったのは、記事中、農水大臣が「移設作業を止めれば事業が大幅に遅れて普天間周辺の危険性や騒音が継続し、日米間の外交・防衛上の重大な損害が生じるとして」執行停止を判断した、と書かれていることだ。これは、政府内で沖縄県漁業規則を所管する部局である農水大臣が、自分の立場で判断すべき内容ではない。この部分は、林大臣の言葉を引用する形にはなっていないので、かなりあやふやだが、仮にこの通りだとすると、安倍内閣のこの問題に対する政治的立場を語っただけのことであって、だとすれば、翁長県知事に「国が申し立て、国が審査する対応は公平公正に行われたのか」と問われても仕方がない。大臣は、少なくとも、漁業規則に内在する論理を使って、防衛局の請求を審査すべきで、これでは「所管」させている意味がない。

辺野古の問題の現段階は、飽くまで技術的手続き的な瑕疵を県側が指摘して、工事の進捗をとりあえず押さえたいというところ。本来的な争点である、埋め立て承認の是非とは距離がある。翁長知事の闘いは、まだ始まったばかりということだ。

喉まで出掛かっている「国家緊急権」。

【読売】の1面トップは「南海トラフ地震 救助14万人を派遣」。「将来予想される南海トラフ地震直後に国や自治体が行う救助活動や物資輸送の計画を公表した」という。特徴は「14万人もの大部隊を各県に派遣する」、「自治体の要請を待たずに支援物資を輸送する『プッシュ型支援』」などだ。関連記事は38面にあるが、大地震時の救援を5分野、72時間を目標に計画化しているとのこと。1面に載せきれなかったものがはみ出してしまった形。

uttiiの眼)南海トラフ地震の際にどのような救援体制を取れば良いか、こういうことを事前に決めておくことには意味があると思う。だが、この記事が1面トップに座っているのはかなり気持ちが悪い。なぜなら、この記事、憲法改正と関係があるからだ。つい先日、礒崎陽輔首相補佐官が憲法改正について、「大災害などを想定した緊急事態条項の新設から取り組むべきだ」と発言している。「最初はできる限り合意が得られるところで行い、次からもう少し難しい問題を議論すれば良い」憲法9条改正や改憲手続きを緩和する96条改正を2段階目の課題とし、「分かりやすいところから改正する必要がある。そうすれば国民も9条などの議論の仕方が分かる」と述べたという(3月22日付け日経)。「緊急事態条項」とは別名「国家緊急権」、自然災害や戦争などの緊急事態に、憲法秩序を一時停止して、非常措置を行う政府の権限のことだ。そんな「戒厳令」のようなものが必要かどうかは大いに議論のあるところだが、大地震対策ということで具体化されていけば、国民の多くは納得してくれるだろうという目論見が政府自民党にはあるのだろう。この記事の内容的な眼目である「14万人派遣」とか「プッシュ型支援」という言葉には、「戒厳令」「憲法停止」の臭いがプンプンする。この記事、そうしたことへの批判的論点は全く書き加えられていない。「賛成するのが常識」という姿勢で書き、その記事を読ませることで、読者の「思考停止」を誘おうというのだろうか。やはり《読売》は政府自民党の広報を担っていると感じる所以でもある。

《読売》の1面左肩には辺野古の問題で、「沖縄知事、対抗措置を検討」との見出しがある。ここで林農水大臣が県の指示を一時停止した理由として書かれているのは、「(作業が続くと調査ができなくなるとは)必ずしも認められない」ということ。その結果、防衛局の主張、作業を停止すると「飛行場周辺住民の危険性や騒音の継続による損害、日米両国の信頼関係への悪影響」が生じるとの訴えを認めたという構成。《朝日》の書き方よりも決定内容のロジックに即したものになっている。ただし、そもそも行政不服審査法を使うことの問題性にいては、《読売》はやりとりのあった限りで両者の言い分を載せるのみで、批判的な解説はない。

もとより「表現の自由」は絶対ではないけれど。

【毎日】の1面は、「ヤフー、検索削除新基準」という見出し。検索結果の削除を求められた場合に、削除するかしないかの基準を明確化しておこうということ。「表現の自由」「知る権利」とプライバシーとの比較考量をする際の基準ということになる。「一般人の非公表の住所や電話番号、長期間経過した軽微な犯罪に関する情報などが記載されていれば削除する」ということのようだ。また、プライバシー侵害情報へのリンク情報については、削除を求める判決か決定がなされた場合に削除するとしているが、リベンジポルノなど権利侵害が明白で重大、緊急性がある場合には判決・決定を待たずに削除するという。欧州司法裁判所で出された判決で「忘れられる権利」が認められるようになってから、大量の削除要請があり、こうした基準作りが必要になってきた。

uttiiの眼)見出しの内容は、これだけ見ても、よほどネット関係に詳しい人でなければ理解しづらい。《毎日》のせいというわけではなく、事柄がそれだけこみ入っているということに他ならない。ネットを使ったいじめや復讐、典型的には元恋人を貶めるための「リベンジポルノ」など、ネットで情報を拡散させることによる人権侵害をどうやって防ぐかというのは頭の痛い問題だ。解決のためには、個々のケースへの対応だけに止めたり、一般にモラルに訴えたりするだけでは足りず、検索の段階で、情報へのアクセスを制限する原則、そういったものを立てる必要が生じたということでもある。ただし事後的な解決に資するため、であるが。

これらの基準によって事後的にブロックされるのはプライバシーを侵害する情報ということになっているが、検索大手が事前に、特定の情報をブロックすることが許されてしまえば、これほど恐ろしいことはない。グーグルにせよヤフーにせよ、アメリカの国家安全保障局によるインターネット傍受に協力していたことがエドワード・スノーデン氏の暴露によって一部明らかになっている。それほど信頼できる人たちではないということだ。情報は、隠されてしまえば存在しないのと同じだ。無いことになってしまえば、手の出しようもない。情報が流れている分については「不都合な真実」を探し出してその意味転換を図ることも可能だが、隠されてしまえばお手上げだ。

ブラック企業、その名は東電

【東京】の1面トップは、「休業補償 払わず混乱」という見出し。東電福島第一原発で死傷事故が相次ぎ、2週間以上作業が止まった今年1月から2月にかけて、待機分などの休業補償を当初支払わなかったため、労働者が労基署に駆け込む事態となっていた。東電は一転して支払うことにしたという。今回、事故を起こしていない会社の作業も総て停止し、「作業員らは宿舎や自宅で待機となり、実質的に拘束されていた」にも関わらず、元請けの支払い要請に対して東電は「自宅待機分などの休みは対象外」と言い張っていたという。

uttiiの眼)いやはや東電というのは凄い会社だ。自分たちは経費の全てと儲けを電気料金に上乗せする「打ち出の小槌」を振り回しておきながら、事故収束作業に携わる作業員への支払いは削減しようとする。おそらく、そのほかにも類似の事態が山のようにあるのではないかと想像する。この問題で分かるのは、ごく普通の労働環境を維持するという意味でも、東電には当事者能力が欠けているということだ。放置しておけば、事故収束作業に当たる作業員を確保することが難しくなっていく。今でも、原発事故に対する対応策の要は、東電を破綻させ、公的な管理の下に事故収束とその後の廃炉(100年は掛かるだろう)に取り組んでいくことなのではないか。

《東京》、他に1面左肩に辺野古の問題。見出しは「環境調査と関係 認めず」、さらに「農相、沖縄の主張否定」とクリアーだ。辺野古関連記事は2面にもあり、ここでも「沖縄県の不信増大」と、これから起こることに対する方向性の感覚が他社よりもずっと明確になっている。了。 


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3月30日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150330】

【はじめに】

 この<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版)をブログ上に公開するのもあと二日のみとなってしまいました。少しはお役に立てるような情報をお届けできたのか、自信はないですが、あと二日、全力で取り組んでいきますので、どうぞご期待ください。

 さて、今朝の各紙は、さしあたって緊急重大なニュースが途切れている中、それぞれの立ち位置で独自のニュースを1面トップに採用しています。普通の言い方に直すと、要するにバラバラということですね。はは。

 《朝日》はアーミテージ・ナイ・リポートに沿って今回の安保法制の内容が作られているとの発掘スクープ、《読売》は地方議員の政務活動費に関する独自調査に基づく記事、《毎日》はナイジェリアで一層凶暴化するボコ・ハラムの蛮行を伝えるルポ、《東京》は4月から始める新しい連載企画の前振りで、終戦直後の「新円切り換え」の候補となった原画の一部が発見されたという独自ネタ。本当に驚くくらいバラバラ。優劣を付けるつもりはないですが、《朝日》と《東京》は、それぞれの仕方で「戦後70年」というものにコミットしようとする姿勢を見せ、《読売》は一種の政治スキャンダルを追う構え、そして《毎日》は刺激的な記事を際立たせようという戦略ということでしょうか。

 各紙に共通する話題が一つありました。陸上男子100メートルの桐生祥秀選手が、追い風参考ながら、日本人選手初の9秒台を記録したとのニュース。てんでバラバラの1面トップ近くに、各紙仲良く、ゴールインする桐生選手の明るい話題にあやかろうかという、今日3月30日の<uttiiの電子版ウォッチ>、ご覧ください。

*4月1日から、この<uttiiの電子版ウォッチ>はまぐまぐ!のメルマガに移行します。

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対応機器    :PC・携帯向け

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発行周期    :毎週 月・火・水・木・金・土曜日

創刊日     :2015/4/1

登録料金    :324/月(税込)

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【ラインナップ】

1.陰謀論と切り捨ててしまう前に。

2.もう号泣する県議は出てこないだろうけど。

3.焦土作戦?ボコ・ハラムの残虐行為。

4.柔和な顔の野口英世博士。

陰謀論と切り捨ててしまう前に

【朝日】の1面は、「安保法制 米提言に沿う」として「知日派作成、首相答弁にも反映」とある。今回作られようとしている新たな安全保障法制の背景に「知日派による提言書」があるというニュース。それ自体は特に新しいものではないが、重要な情報がいくつか含まれている。レポートは、米国の共和・民主の知日派が「党派を超えて作った」ものであり、一回きりではなく、2000年、2007年、2012年と三回発表されている。「12年版」は集団的自衛権の行使を容認するよう勧め、ホルムズ海峡の機内除去と南シナ海の共同監視を具体的に掲げ、安倍総理の国会答弁などでの発言に反映されているとする。関連記事が2面にあり、そちらは「現場から考える安全保障法制」という連載の〈上〉に当たる。内容は、自衛隊発足前から実績のある日本の掃海技術をアメリカが欲しがっていること、昨年11月の日米共同での機雷敷設・掃海訓練の模様、そして安倍総理を含む日本政治の中枢に「湾岸トラウマ」があって「お金だけでは世界に評価されない」と思い、自衛隊の中東派遣にこだわっていることなどが書かれている。

(uttiiの眼)なんだか、情けなくて涙が出てくるような話だ。「知日派」と言えば何か実態があるかのようだが、要は「ジャパン・ハンドラーズ」と言われる連中のことであり、アメリカ国防総省に根っこを持っているのだろうが、現在の政権そのものとは距離のある数人の個人、つまりは、いくつもあるアメリカのうちのたった一つに過ぎない。その連中の書いたリポートが、選挙を通じて日本の有権者に選ばれたはずの我が総理大臣が国会で答弁した内容に反映しているというのはどう考えたら良いか。日本の独立ははまだ果たされていないと考えた方がよいのか。おそらくハンドラーズたちは巧妙で、安部晋三氏以下、保守派の政治家たちは、アメリカに付き従い、アメリカの要求を何から何まで飲むことこそが、日本が「普通の国」となり、もしかしたら世界から「尊敬される」国家になることなのだと、深く思い込まされているのではないか。「従属こそが独立の道」という逆説。ここには、『永続敗戦論』で白井聡が描いた戦後日本人の心模様に通じる精神構造が浮かび上がってくるようだ。不思議なのは、こうした屈辱的な現実(家畜人ヤプー的な)を、「知日派作成、首相答弁にも反映」などという中性的な言葉で書き連ね、記者なのか編集者なのか、とにかく「おっかなびっくり」の風情に見えることだ。こうした内容のものをトップに持ってくるにはそれなりの「勇気」が必要だったはずだが、せっかくの記事の焦点・論点を明示するという重要な仕事を蔑ろにしているようにみえる。いや、単に安倍官邸からの圧力が怖かっただけなのかもしれないが。もっとハッキリ書いて欲しい。

*いつも電子版しか見ていないのですが、たまたま紙の13版を見たら、《朝日》の見出しが違っていました!なんと、「安保法制 米が筋書き」となっているじゃないですか!「沿う」ではなくて「筋書き」!安倍内閣が骨の髄まで対米従属の内閣であることの何よりの証、という印象の見出し!ところが、電子版は「米提案に沿う」。朝日新聞デジタルを探しても、「沿う」という記事しか出てこない。これはやっちまったなと。紙の最終版も「沿う」ことにしたのでしょう。こういうのを自粛とか萎縮、というのでしょうね。ああ、恥ずかしい。最終版の14版と電子版については、官邸から怒られないように、トーンダウンしてしまった。社内で激論があったか無かったか、とにかく編集責任者は「安全策」を取ったということなのかもしれません。これが今の《朝日》ということになりますな

 今朝の《朝日》。他には3面に、辺野古の作業停止を指示した翁長沖縄県知事に対して国が取った対抗措置についての記事。行政不服審査法に基づく審査請求は、「簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済」という法の趣旨に合致しないとの識者の見解を紹介している。

もう号泣する県議は出てこないだろうけど。

【読売】は地方議員の政務活動費問題。《読売》が調査したところでは、20議会で新幹線や特急の領収書が不要、7議会では航空機利用についても不要という。領収書に代わって自書したものを提出するのだが、格安運賃を利用したのに正規運賃を記載するなだの手口で差額を受け取るなどしているという。

(uttiiの眼)正規運賃との差額を「受け取る」というのは、普通に考えれば「横領」とすべきだろう。《読売》は色々蛮勇をふるうことのある新聞だが、今回はやけに慎重な書き方になっている。まあ、しかし、独自調査の結果で1面トップと胸を張るには、獲物が小さいような気もする。どこかの号泣県議のように、行ってもいない視察を年間106回同じ温泉地に通ったかのように偽装した例と比べると、どうしても「カワイイ」レベルに見えてしまうからだ。記事にインパクトがない理由はもう一つあって、それは、個別の事例でいくらの不正があったのか、具体的な金額を示せるような次元に取材が至っていない、深まっていないからだと思う。

 今朝の《読売》、他には、3面の「スキャナー」で4月1日に発足する「日本医療研究開発機構」についての記事。 

■焦土作戦?ボコ・ハラムの残虐行為。

【毎日】の1面は国際面のルポに続き、ナイジェリアの情勢。縁遠いようだが、凶暴さを増す一方の過激派組織ボコ・ハラムは、あの「イスラム国」に忠誠を誓う集団だ。今回のルポは、隣国チャドへの越境攻撃で見られた、町や村を火攻めにし、地域全体を破壊するケースだ。3面の「クローズアップ2015」になると、ややトーンの違ったルポと解説記事になる。ボコ・ハラムの凶暴化は、戦況が劣勢になっていることに対する焦りからなのだという。もともとはイスラム教徒殺害などへの怒りから支持を集めていたポコ・ハラムだが、残虐行為に対する住民による抵抗、あるいはチャド軍やニジェール軍の侵攻などがあり、追い詰められた結果のさらなる残虐行為という側面。同時に、そうした破壊行為によって生産活動が停滞し、一層の貧困化が戦闘員のリクルートを容易にするという、負のスパイラルも生じているという。

柔和な顔の野口英世博士。

【東京】の1面は、やはり強力な文化部の仕事なのか、「幻の紙幣 原画あった」とのタイトル。「終戦直後の新円切り換え」の時に、民間企業も図案の作成に加わり、候補とされたものが53点。そのうちの12点が現存したというのだが、参加企業の一つであった大日本印刷が社内に残っているのを発見したのが5年前。それを今回、東京新聞に公開したということだ。紙面には、野口英世を描いた十円紙幣と伐折羅大将の図柄を施した千円紙幣が紹介されている。

(uttiiの眼)十円紙幣の真ん中に描かれているのが野口英世というのが楽しい。この頃からなんとなく温和な表情の野口英世博士が中央に収まって、実に平和な雰囲気を醸し出している。記者も「GHQの意向を背景に武人などを用いた戦前の図側から大きな方針転換があったことがうかがえる」としているから、小生の感想もあながち的外れではないのだろう。発見された12点はいずれも採用されなかった。そもそも53点中採用されたのは原画が発見されていない5円札のもの一つだけで、千円券と五百円券は「高額紙幣はインフレを助長する」という理由で発行自体が立ち消えになったという代物。最初からそういう話にしておけば良いのに、占領軍との調整もずいぶんチグハグとしたものだったのだなあという感想。まもなく始まる「甦る経済秘史」に期待しよう。

その他、《東京》の重要な記事は、1面左に小さいが、共同通信の世論調査で「集団的自衛権の安保法制」につき、今国会での成立に反対する声が49.8%と、賛成の38.4%を上回ったとの記事。また、「一票の平等訴訟」の司法基準が甘すぎると指弾する社説(用語法に注意。「一票の格差」と言わないところが真骨頂)、さらには東電が市町村除染の費用請求に対して、2%分しか払わず、あとは拒否しているという社会面31面の記事など。了。


 


 


 


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3月27日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150327】

【はじめに】

 昨日予想したとおり、今朝の各紙は、ドイツ旅客機墜落事故に夢中になってしまったようだ。それはそうだ、フランスの検察当局が発表したところによれば、ボイスレコーダーの解析結果からみて、事故は、28歳の副操縦士が機長をコクピットから閉め出し、自分で降下ボタンを押し、意図的に墜落させたことが分かったという。アンドレアス・ルービッツ副操縦士は、おそらくはトイレに立った機長が戻るのを阻止し、自動操縦の状態にあった機を意図的に降下させ、その後は一言も発せず、山岳地帯に激突させたと考えられている。副操縦士にうつ病や「燃え尽き症候群」を指摘する記事も一部で始めているが、真相は分からない。精神疾患は突然発症することもあるから、どんな可能性もまだ残されていると考えた方がよいだろう。だが、少なくとも、テロリストとしてリストアップされていた人ではないそうだ。パイロット同士の人間関係なども含む、様々な要因によってこうした事態が起こりうるので、やがては機内の構造を、対処可能な形に変更するなどの「対策」が打たれることだろう。しかし、誰が正常で、誰が正常でないかをどうやって判断・判定するのか、筆者には人を増やすこと以外に考えが浮かばない。先頃日本では全機引退したB747ジャンボ機でも、以前は三人で運航していたのが、次第に「ツーマン体制」に移行していった経緯がある。パイロット(機長)とコーパイロット(副操縦士)、さらにフライトエンジニア(航空機関士)という三人がコクピットで運行業務に携わるのが普通の時代があったということだ。

それにしても、激突直前まで異常に気付かず、最期にわずかな叫び声とともに幽明の境を超えていった人々のことを考えてしまう。そんなブルーな一日の始まり、でも気を取り直して、3月27日の<uttiiの電子版ウォッチ>をご覧ください。


 

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【今日のラインナップ】

1.  副操縦士の顔写真が「必要」だった理由

2.  国会は早くも「べた凪」状態か?

3.  湾岸戦争をもう一度?

4.  設置すべきか、せざるべきか、市長が翻意した本当の理由。

1.副操縦士の顔写真が「必要」だった理由

【朝日】は、《毎日》とともに、副操縦士の顔写真を載せている。いずれもフェイス・ブックから取ったもので、両社ともトリミングを施している。真面目そうな普通のドイツ人といった雰囲気の人物がにこやかな表情をして写っている。フランス検察当局などによる3ショットの記者会見映像は、各紙使っている。微妙に違う瞬間を捉えたショットだが、見えているものにさしたる違いはない。中央の検察官が強い調子で何かを語っている脇で、手前には警察の責任者らしき人物が瞑目して両手で口の周りを覆い、事実の重大さに耐えているような姿が映っている。奥側にはレスキュー隊の責任者らしき人物が悄然とその場に座している。事態の異常さ、不可解さ、そして重大さの前に、当局者たちも茫然自失の状態にあることが、この一枚で分かる。

どこにも書いてないけれど、副操縦士の写真を掲載することによって、《朝日》や《毎日》は、「彼は移民や移民の子孫ではないですよ」と言いたいかのように見える。「意図的な墜落」ということになれば「テロか?」ということになり、「イスラム過激派か?」と連想が働いてしまうから、「テロリストとして手配されているわけではない」というフランス検察当局の公式発言を補強する効果を持たせたいのかもしれない。だが、これはメディアとして正しい姿勢だろうか。ドイツ人の顔をしていれば「テロリスト」でない?ならばその逆は?《読売》が副操縦士の写真を載せていない理由は分からないが、仮に、アラブ系の移民や移民の子孫が「テロリスト」視されることに対する否定の意味合いを含んでいたのだとしたら、《読売》の方が正常な感覚なのではないか。因みに、《朝日》と《毎日》がおそらくは勝手に転用した写真の出所であるフェイス・ブックのページは、既に削除されていて見ることができない。また、《東京》も顔写真を掲載していない。

《朝日》の1面左肩には、「統一選スタート 10知事選告示」「原発・アベノミクスも争点」の記事。これは三つある関連記事への導入的な内容で、各関連記事は、自民と民主の対決は北海道と大分の二つのみであること、投票率も低く、統一率に至っては27%しかないこと、さらに社会面では、各知事選の争点である、実績、官僚出身か否か、多選批判などの選挙模様を描く。読んでいても、元気が出てこない。

2.国会は早くも「べた凪」状態か?

【読売】1面は既述の通り。4面に統一選スタートに関する記事、《読売》は政党レベルでの選挙戦への構えを詳報している。10の知事選の全てで現職を推し、全勝を目指す自民党。かたや、網膜剥離の再手術から回復途上の岡田氏率いる民主党は岡田氏の地元、三重でさえ候補を立てられなかった。そんな対比が浮かんでくる記事だ。

政治面は、上述の統一地方選の各党に関するニュースの他、「政府、対北圧力強化へ」として、マツタケ不正輸入を口実に朝鮮総連議長自宅を家宅捜索したことに端を発するニュース、さらに、「参院審議「与党ペース」」「15年度予算 来月8日成立目指す」の記事、そして「沖縄知事との会談時期言及」として、菅官房長官が無礼にも「国会の見通しがついたら」などと会見で述べたことがニュースになっている。それぞれ大きな問題につながる導火線のような記事なのだが、あっさりと書かれていて、全体に「それいけ!安倍内閣」的な雰囲気が充満している。《読売》らしさと言えばそれまでだが。

3.湾岸戦争をもう一度?

【毎日】は既述の通り、副操縦士の顔写真を載せる。顔の部分だけを拡大しているので、かなり目の粗い写真だが、既述のような「目的」は果たしうるのだろう。

1面左肩には、サウジ主導の湾岸諸国が、イエメンの武装組織フーシに対する空爆を行ったとの記事。首都サヌアを実効支配するに至ったシーア派の武装組織フーシとスンニ派の現政権の内戦が中心だったが、これで湾岸諸国とイランが関わる大戦争に発展しそうな勢いだ。

サウジは地上軍も派遣する勢いで、ウラにはアメリカがいるのだろうが、その点、直接には書かれていない。ここに自衛隊を派遣するにはあと何が必要か、おそらく官邸や外務省ではそんな「計算」を始めている部署があるに違いない。

4.設置すべきか、せざるべきか、市長が翻意した本当の理由。

【東京】は、ドイツ旅客機墜落事故について各紙が伝えている情報を、確定的なものとは捉えていないようだ。見出しに「副操縦士 墜落させる?」とクエスチョンマークが付けられている。異例なことだ。1面腹の部分には「統一選スタート」として、3面の「核心」を含む4つの関連記事の導入となる短い記事もあるが、その中身の中心は関東の知事選、つまり神奈川県知事選の話題になっているのがブロック紙らしいところだ。

注目は、左肩の「所沢エアコン設置へ」との記事。住民投票の結果を受け、エアコン設置を中止していた市長が方針を転換した。市長が反対していた理由は、当初は「快適で便利な生活を見直すべき」と考えていたことだったが、住民投票時には「市財政の悪化」などもあげていた。住民投票は「賛否の多い方が投票資格者総数の三分の一以上となった場合に、市長と市議会は結果の重みを斟酌しなければならない」ものだったが、その規定に届かなかった(投票総数そのものが三分の一に届かず)にもかかわらず、市長は「結果」を尊重することになる。

関連記事が30面にあり、住民の反応が書き留められている。住民投票条例の制定を目指して運動を起こした住民は一様に喜びの声。これは当然としても、反対票を投じた住民の中には、考えを変えた市長を批判する声だけでなく、「住民の声を直接聞き市長が決めたことには意味があった」という意見の人も。ちょっと悩ましく感じるのは、条例の規定によれば、今回の投票結果は、市長と市議会が結果を斟酌しなくてもよい範囲に入っている。したがって、「エアコンを設置しない」選択があり得た。ただし、このように、投票率で結果の有効性に条件を付けたとしても、政治家である市長は、単純な多数意見を採用したくなるものなのだろう。見方を変えれば、政治家は、投票結果を自由に使うことができるという意味にもなる。さて、そのことをどう考えたらよいか。追々、国民投票法のことも併せて、考えてみたい。今日はここまで。了。

 


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3月26日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150326】

【はじめに】

今朝の各紙は、フランスの旅客機墜落事故の続報を1面のどこかに載せているが、トップに持ってきたのは《読売》のみ。トップには、《朝日》が規制改革会議の提言を取り上げ、不当解雇の「金銭解決制度」導入について書き、《毎日》と《東京》は、昨年暮れの総選挙に関する「一票の格差」裁判の福岡高裁判決で「違憲」判断が出たことで揃った。航空機事故に夢中な《読売》以外は、それぞれ国民の権利に関わる重大な問題を取り上げていて頼もしいけれど、海外メディアによる事故の続報の中には、「操縦士の一人が墜落前にコクピットから閉め出されていた」(ニューヨークタイムズ)との報道もあり、「事実は小説よりも奇なり」的な興味に引きずられ、明日以降、他紙も「事故に夢中」になってしまうかもしれない、などと予感しながら迎えた3月26日、本日の<uttiiの電子版ウォッチ>をご覧ください。

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【ラインナップ】

1.    《朝日》の本音は規制緩和歓迎?

2.    ボイスレコーダーが知る真実。

3.    無効に踏み込めない裁判所と身を切れない政治家たち。

4.    最高裁は政治家が苦手~「一票の平等」判決が煮え切らない本当の理由。

 

               1.《朝日》の本音は規制緩和歓迎?

【朝日】は、不当解雇の「金銭解決制度」導入を規制改革会議が提言したというニュース。これまでは「金を払えばクビにできる」と組合などに反対され、実現しなかったとする。裁判で不当解雇と認められ、「職場復帰」が可能となっても、実際には金銭で「解決」するケースがほとんどで、裁判やその後の交渉などで時間が掛かっている現状を変えるため、提言は「金銭解決の選択肢を検討すべき」としているという。7面の関連記事、見出しこそ「「安易な解雇」懸念」とするが、この制度は「欧州主要国では一般的」で、現在の日本でも労働者の職場復帰は権利としては認められていないとしたあと、記事内容は解決金の水準という問題に踏み込み、要は金額の問題というまとめ方になっている。企業側の支払いコストを削減するだけでなく、解雇される側の労働者にとってもその方がよいのだという観点は、コメントを求められた濱口桂一郞氏(労働政策研究・研修機構の主席統括研究員)に代弁させている。並んで、日本労働弁護団の佐々木亮弁護士による、「導入されたら適用が広げられてしまう危険」を指摘するコメントも掲載。

「岩盤規制」と名指しされ、規制改革論議ではいつも頭をもたげてきたこのテーマについて、記事のトーンは「今回は仕方がないのではないか」というように読める。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションにせよ、派遣法改定にせよ、労働規制緩和の基本的な考え方は、労働者保護的に作用する特別な法体系としてくみ上げられてきた労働法制全体に対する攻撃に他ならない。「労働法は必要ない」「民法上の契約だけで良い」という類いの発言は、新自由主義的な規制改革会議などの専門委員からたびたびなされてきたと承知している。だとすれば、そのような観点からのまとめ的な記事がなければ、読者はまたしても「ああ、仕方がないのだな」という諦観に誘導されてしまうではないか。ヨーロッパの事例についても、彼の国々では、「尊厳ある労働」が措定され、たとえば正規と非正規の間に賃金差別を許さないような法文化が育った上での「金銭解決」だということを明確にしておくべきだ。「世界が導入している新しい素敵な制度」という誤解を読者に与えて良いものだろうか。《朝日》的な「中立」には、強力な毒が含まれている。

2.ボイスレコーダーが知る真実

【読売】の1面は飛行機事故。見出しは「音声記録
取り出し成功」。コクピット内の会話を自動で記録するコクピット・ボイス・レコーダーが回収され、データの回収に成功したとして、ひしゃげたボイスレコーダーの写真を掲載している。昨日の《朝日》は早々と「テロではない」と示唆するような記事を書いていたが、はたしはてどうだろうか。《読売》も、フランスの内務大臣が「事故であると考えている」と述べており、テロの可能性を否定したとしている。3面の「スキャナー」には、事故機の飛行高度をグーグルマップ上に落とした模式図が載っている。タイトルは「急降下
謎の8分間」。巡航高度に達した後に異常が起こっていることに、航空関係者が首をかしげているという。別の飛行機ないし飛行体との衝突などでもない限り、事故の大半は離着陸時に起こっている。巡航高度1万メートル上空で急減圧が起こった可能性を指摘する現役機長がいるという。事故原因を巡る議論とは別に、《読売》は欧州でLCCの市場シェアが4割に上ること、大手エアラインが危機感を強め、LCCの買収や路線拡大を図っていることなどが書かれており、年間1600万人の乗客数を記録するジャーマンウィングスも、2009年にルフトハンザが買収したものだという。

日航ジャンボ機御巣鷹事故の取材経験から言うと、上空で急減圧が起きたとき、パイロットはまず真っ先に酸素マスクを付け、適切な高度まで降下することを考えるということだった。御巣鷹事故の場合には、パイロットがマスクを付けた形跡がなく、また会話の中でも「つけますか」という問いかけがあったが、答えは記録されていなかった。事故調査委員会のシナリオは、飛行中の隔壁破壊によって急減圧が起こり、機内を吹き抜けた風が補助動力装置と油圧系統を破壊、墜落に至ったというものだったが、パイロットたちのなかにはそのストーリーを信じない人が多かった。その理由が、酸素マスクを付けていなかったという事実だった。今回もCVRが回収されているので、マスクを付けたか否かは既に分かっていることだろう。急減圧が起きても、パイロットが二人ともすぐに意識を失うようなことでもなければ、そのまま墜落するということは考えにくいのではないか。ニューヨークタイムズが、軍高官の話として、パイロットの一人がコクピットの外に閉め出されていたと書いているのが気に掛かる。コクピット外にいたパイロットはドアをたたき、中から応答がないので最後はドアを破ろうとしていた様子が記録されているという。公式の発表はまだないが、いったい何があったのか。

3.   
無効に踏み込めない裁判所と身を切れない政治家たち

【毎日】。昨年暮れの衆議院選挙の区割りを「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとして、弁護士グループが全国の高裁に訴えている全17件の裁判。福岡高裁が17件中初めての「違憲」判決を下した。例によって選挙そのものは無効としなかったが、それでも国会が付け焼き刃的に決め、実施された「0増5減」は格差是正に不十分とした。「0増5減」は、対象選挙区についてだけ「1人別枠方式」を止め、しかし残りの選挙区ではそのままにするという、非常に中途半端な区割り改革だった。「1人別枠方式」の撤廃を求めた09年最高裁判決から3年9ヶ月が経過しており、「是正のための合理的期間も過ぎていると」判断された。5面と28面に関連記事。5面は、衆院の選挙制度調査会で自民、民主、維新、公明の四党がそれぞれの定数削減案を出したというニュース。座長の佐々木毅元東大学長の「難しい課題が横たわっていることを痛感」という言葉を紹介。この調査会ができるまでに29回の各党協議があったということを知るだけで、結論は半永久的に出ないのではないかとの絶望感に襲われる。28面は訴えた側、弁護士サイドの受け止めが書かれている。裁判所の判断について、「人口比例が憲法上の要請と真正面から認め、格差が2倍未満でも駄目だと明確に示した」と評価する一方、「違憲も違憲状態も似たり寄ったりだ。無効まで踏み込むかどうかが一番の問題」とする弁護士もいる。

憲法上の権利を巡って深刻な「差別」が存在し、制度によって温存されているというのに、しかもその是正に弁護士グループの膨大な労力が費やされているというのに、進展の仕方があまりにも遅い。政治家が保身のためにまともな提案一つ出せないのであれば、民間で詳細な区割り案に提案を行い、それをメディアが前面に押し立て、反対する議員を追い詰めていくというようなことでもしないと、投票価値の平等を実現することはできないのではないか。この問題を見ていつも思うことだ。そのメディアの方向性が怪しいので、この話も一向に進みそうにないのだが

《毎日》の5面には、安倍総理が20日の参院予算委で自衛隊を「わが軍」と呼称したことについて、菅官房長官が「防衛を主たる任務とする組織を軍隊と呼ぶなら、自衛隊も軍隊の一つだ」とし、自衛隊は国際法上の「軍隊」だと明言した。総理は同じ委員会の答弁の中で「わが軍」発言の直後に「自衛隊」と言い直し、また菅氏は25日「自衛隊が軍隊とは断言していない。軍隊ということができる、ということまでだ」と言ったという。野党は追及する構えのようだが、やるならば徹底的にやって欲しいものだ。特に菅氏は、屁理屈で誤魔化そうとしている。内閣が一つ飛んでもおかしくない。

    4.最高裁は政治家が苦手~「一票の平等」判決が煮え切らない本当の理由

【東京】は1面に続き、3面の「核心」で、高裁段階の判断が割れる背景を分析している。今回福岡高裁が違憲としたこの裁判、これまでの違憲一件、合憲三件、違憲状態七件と判断が割れている一つの理由は、「0増5減」についての評価に差があるからだ。合憲とした東京高裁では「最大格差は2倍を少し超える程度。格差是正を目指す取り組みも妥当だ」と判示している。これでどうして違憲でないのか分からないけれど、この裁判官は、小選挙区制はこんなものだと思っているのかもしれない。もう一つの理由は、「そもそも最高裁の示す判断枠組みがあいまい」と言うのは一橋大学の只野雅人教授。最高裁が13年の判決で、「段階的な見直しを重ねることも現実的な選択肢」と判示してしまったため、高裁が混乱しているというのだ。確かにこれでは「違憲」という判断を下すのに勇気がいりそうだし、そもそも無効、選挙やり直しを命ずるのは、私が判事でも躊躇するだろう。要は、最高裁が判決のあり方に非常に堅い枠をはめてしまっているようにも見える。(ちなみに、小選挙区区割りを違憲とする訴訟について、《毎日》他は「一票の格差」裁判という言葉で表現するのだが、《東京》は「一票の平等」裁判とする。)

 今日の《東京》、「こちら特報部」は、「文官統制廃止」の動きについて、二人の専門家に話を聞いている。山口大学の纐纈厚副学長は、シビリアンコントロールを「文民統制」と訳したことについて、徹底した民主主義による軍事統制の意味を込め、「民主党製」や「市民統制」とすべきだったという。シビリアンコントロールは、文官統制を通して実現しているといい今回の動きを危ういと見ている。もう一人、『シビリアンの戦争』の著者でもある東大・日本学術振興会特別研究員の三浦瑠麗さんは、「安定した民主主義の元では、シビリアンは軍人より好戦的になる」という。このあたり、軍事評論家の田岡俊次さんと共通するリアルな見方だ。今回の改正があっても、文官と武官の双方から政策提案があるようにすれば、シビリアンコントロールはむしろ強化されるという。了。


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3月25日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150325】

【はじめに】

 昨夜に速報で入ってきた、ドイツの旅客機が南仏で墜落したとのニュースが《朝日》《読売》《毎日》各紙の1面トップ。乗員乗客150人が絶望で、日本人2人の名前か搭乗名簿にあるということで各紙最大の扱いになっているが、1面トップというのはどうだろう。《東京》だけは社会面。ブロック紙だからと思われる向きもあるかとは思うが、こちらの方が正常な感覚ではないか。大新聞が今もセンセーショナリズムに毒されていることの証左、と言いたくもなる。

 日本近代文学史上の大発見、魯迅の弟、周作人に当てて日本の文学者らが書き送った大量の手紙類が北京で発見されたニュースを、《毎日》と《朝日》が1面に載せている。《読売》は37面に小さな扱い、《東京》は強力な文化部を擁しているが、今朝は載せていない。ちょっと痛い。東京都内でも桜が咲き始めた3月25日の<uttiiの電子版ウォッチ>ウォッチをご覧ください。

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【ラインナップ】

1.   LCCのエアバスA320がまた墜落した。

2.   政権の意向を粛々と伝える新聞とは・・・。

3.魯迅に似ている。

4.新座市教育委員会は不思議ちゃん。

1.LCCのエアバスA320がまた墜落した。

【朝日】の1面トップは上述の通り、スペインのバルセロナを飛び立ってドイツデュッセルドルフに向かっていた旅客機が南仏の山岳地帯に墜落、乗員乗客150名が絶望視されているニュース。墜落したのは、ドイツの航空会社、ルフトハンザ子会社のLCC(ロー・コスト・キャリア)でジャーマンウイングス社のエアバス320。

関連記事は二つ。2面の「時時刻刻」では、捜索困難な現場の詳報と墜落原因の推測を試みている。この部分が興味深い。なんと、インターネット上で飛行データを提供する「フライトレーダー24」というものに掲載された「飛行記録」を参照。水平飛行に入った「約7分後に突然降下を始め、10分ほどで約7千フィート(約2100メートル)まで下りて記録が途切れた」という。まあ、飛んでいた飛行機が落ちたのだから、どこかで降下ないし急降下があったことは推測可能なので、あまり役に立つ情報ではないけれど、新聞記者がネット情報で記事を書くというのは新しいとだけ言っておこう。普段、ネットを「悪の巣窟」のように言い立てる大新聞だが、利用できそうなものは利用するようだ。墜落原因の解明につながるのは、事故機に搭載されているはずのCVT(コクピット・ボイス・レコーダー)とDFDR(デジタル・フライト・データ・レコーダー)の回収と解析を待たなければ正確なことは何も言うことができない。それよりも《朝日》は、同型機の現役機長に「爆発や撃墜による落ち方とは思えない」と言わせている。テロではないという趣旨だが、これも少々あやふやな話に聞こえる。もう一つ、LCCがヨーロッパでも急成長している状況について、ロンドンの記者が「航空情報大手OAGのサイト」を引用(またしてもネット情報だ!)。10年間で年率14%の伸びを示した驚異のLCC成長データを示している。背景にあるのは、共通市場政策によって「航空業の許認可が各国からEUに一本化された」ことがあるという。なるほど。

この事故をきっかけに、すぐにイメージできるのは、昨年暮れにインドネシアで墜落した、やはりLCCの、やはりエアバス320の事故。162人が死亡・行方不明となった事故だ。その点についての言及は全く無い。エアバス320はLCCの代名詞のような飛行機だ。それが3ヶ月間に二機落ちた。何か、示唆くらいしておくべきだろう。

2.   政権の意向を粛々と伝える新聞とは・・・。

【読売】の1面トップもドイツの旅客機が墜落した事故だが、左肩の記事が実質的には重要。沖縄県の翁長知事が作業の停止を指示した昨日のニュースに続いて、今朝の《読売》は「沖縄県指示は「無効」」との見出しで記事を掲げている。「辺野古移設菅長官「粛々と続行」」という中見出しを併せ、ストレートに安部政権の対応を記している。県知事の指示に対して、関連法の所管する林農水大臣に対し行政不服審査法に基づく「審査請求」を行ったと発表。結論が出るまでに県指示の効力を停止させるための「執行停止」も求めたという。この執行停止要求については、農水省は沖縄県に対して30日までに弁明書を出すよう求め、まあ、農水大臣が官房長官に逆らうとも思えないし、審査請求もいずれは国に有利な内容で決着、従って工事は、何の障害もなく続行されるということになると《読売》の記事は言いたいようだ。

しかし、この書きぶりはいったい何だろうか。見出しの内容はまさしくこの新聞社が「安部政権の代弁者」たらんとしていることを示しているように思える。一連の法的手続きの流れにしても、本来、私人が行政機関による公権力の行使に対して不服を申し立て、侵害された権利の回復を果たすための法制度である「行政不服審査法」使って、こともあろうに総理大臣が自ら任命した大臣に審査請求するなどと言う茶番を演じているのに、その点を全く指摘しない《読売》の神経はどうかしている。それと、《読売》には無理なことと承知の上ではあるが、官房長官が県の指示について「違法だ」「無効だ」と喚きちらしていることについても、「適法」かつ「有効」という意見を対置する余裕が欲しい。このままでは《読売》は安倍政権の公報機関誌のようになってしまう。

3.魯迅に似ている

【毎日】の1面ももちろん飛行機事故だが、存在感のある記事は左肩、「魯迅の弟宛て1400通」の見出し。既述の、日本近代文学史上の大発見の奉じ方として、このタイトルは巧い。サイドには「武者小路実篤、谷崎潤一郎……日本から400人」とあり、日中の文学者間に膨大な手紙のやりとりがあったことが直感的に分かる。魯迅の弟、周作人(顔写真付き)は明治末期、魯迅に従って来日し、多くの文学者たちと交流を持った人だという。武者小路の「新しき村」運動にも共鳴し、後に北京で支部を作ったことがあったという。戦後、日本との関係を理由に迫害され、文革時代には大量の書簡類も一時没収されていたという。戦前から戦後にまたがる時期に交わされた手紙。研究者は、周作人から日本の文学者たちに宛てた手紙の発見が欠かせないと言っている(この部分は《朝日》の記事に記載がある)。

4.新座市教育委員会は不思議ちゃん

【東京】は、旅客機事故を社会面に載せ、1面トップは「新座市が「慰安婦」展拒否」というニュース。市の施設で「慰安婦」をテーマにした展示会を企画した市民団体に対して、拒否したのは新座市教育委員会。使用要領のなかに、「啓発的な事業」は許可しないと定めてあったという。用意されていたパネルは「女たちの戦争と平和資料館」が制作したもので、全国の希望者に貸し出され、既に公共施設など17カ所で展示されたものだという。資料館の池田惠理子館長は、市教委の「自主規制」を怪しむ。

「慰安婦」については、《朝日》が吉田証言を報じた記事の取り消しをしたことが影響して、事実そのものがなかったかのような言説がまかり通る状況にある。ややこしい議論になるのを避けたいという、行政担当者の事なかれ主義が蔓延し、各地でこうした問題が起こってきている。「慰安婦」のみならず、南京事件でも、あるいは憲法九条を口にしただけで「政治的」として公共の場(公共施設、あるいは広報誌なども含めて)が排除される傾向が著しい。今回のケースは、さらに意味不明な「使用要領」なるものが登場しており、この経緯はよく分からないが、そもそも「啓発的な事業」でない事業とは何なのか。公共的な場であらゆる啓発的な事業がなされてはならないというのはどういうことなのか。誠に不思議な新座市のあり方ではある。

 26面「ニュースの追跡」では、20日の参院予算委員会で、安倍総理が答弁中、自衛隊を「わが軍」と呼んだことについて書かれている。自衛隊は軍隊ではない、だから合憲なのだという理屈をさんざん述べてきたはずなのに、これは完全に違憲の発言だ。容易ならざる事態だが、国会でも、あるいは《東京》以外のメディアについても、この問題について知らん顔のようだ。本当は1面トップでも良かったくらい。「解釈改憲」ということがよく問題視されるが、これは「口先改憲」。こんなことを許してはいけない。了。


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3月24日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150324】

【はじめに】

今朝の各紙は1面で、沖縄県の翁長雄志知事が、「辺野古作業停止を指示」との大ニュースを伝える。知事は、安倍政権が強行している辺野古での新基地建設を前提したボーリング調査で、許可されていない区域でサンゴ礁を損傷している可能性が高いと判断、知事の権限に基づき、現場海域での全ての作業を七日以内に「停止」するよう、沖縄防衛局に指示した。指示に従わない場合、「岩礁破砕許可」を取り消す。政府は粛々と工事を続けると言い張っているが、知事は法廷闘争も辞さないとしている。

1面トップの見出しは、文言も全紙ほぼ同じ、辺野古周辺の立ち入り禁止区域などを図示している点も各紙共通する。翁長氏の写真もみな載せているが、《読売》だけが翁長知事と菅官房長官が向かい合った形のコラージュになっている。「翁長知事が作業停止を指示し、政府はかまわず工事を続行すると言っている」というところまでをニュースと考えてのことだろうか。それは一つの選択だが、裁判でも起こさなければ対抗できない、都道府県知事の独立した強い権限に敬意を払っておれば、官房長官の顔写真など載せずとも成立するニュースであることは明白だ。政府に与えられた猶予は七日間。指示が無視され、工事が続行されていれば、それは明白な違法行為を政府が行っていることになる。法的に、安倍政権は守勢に立たされている。

いよいよ決定的な段階に差し掛かった辺野古の問題は、新聞にとっても、リトマス試験紙の役割を果たしているということに、そろそろ気がつかなければいけないだろう。各紙はいったい、誰の立場に立とうとしているのか。そんなことが自然と意識にのぼってくる3月24日の<uttiiの電子版ウォッチ>、ご覧ください。

*4月1日から、この<uttiiの電子版ウォッチ>はまぐまぐ!のメルマガに移行します。

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発行周期    :毎週 月・火・水・木・金・土曜日

創刊日     :2015/4/1

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【ラインナップ】

1.   昔からどこか冷たいところのある新聞だった?

2.   コラージュが覆い隠すもの

3. 官房長官とは全く逆の意味で、「日本は法治国家だ」!

4.  琉球新報の記事が載る東京の新聞。

1.昔からどこか冷たいところのある新聞だった?

【朝日】の1面トップの見出しは、「辺野古作業停止を指示」。《朝日》の特徴は、キーワードとして「埋め立て承認」と「岩礁破砕許可」に解説を付けた点だ。今回の「停止指示」は、沖縄県が仲井眞知事時代に出した「岩礁破砕許可」に条件が付けられていて、「公益上の事由により県が指示する場合は従わなければならず、条件に違反した場合には許可を取り消すことがある」と書かれていることを根拠に、知事が出したものだ。さらに、前任者仲井眞知事による「埋め立て承認」の法的瑕疵について検討を続けている第三者委員会の結論は7月までに提出される予定で、その内容次第では、そもそもの「埋め立て承認」が取り消されることもありうる。まずは、再開されたボーリング調査の過程で許可水域外にコンクリートブロックが投下され、サンゴ礁を傷付けている可能性が高いと分かった段階で、知事は第一段階の動きに出たということなのだ。今回の知事の指示はまだまだ序の口。次は基地建設そのものを否定する法的措置が控えている。そのことが明瞭になるという意味で、《朝日》の解説姿勢は、読者の正確な理解に資するものと言って良い。

関連記事は三つ。2面「時時刻刻」では、翁長知事の論法は、県による海底調査のための作業停止指示に従わなければ許可そのものを取り消すというやや強引な論理で、裁判になった場合に「県側に必ずしも勝算があるわけではない」とする、いかにも政治記者らしい書きぶり。官邸の対応についても記されていて、菅官房長官が「この期に及んで」という言葉を4回(他紙によれば5回説も)も繰り返し、「我が国は法治国家だ」と発言したようだ。また、安部、菅両氏が翁長知事の再三の求めにもかかわらず面会さえ拒んでいることに関して、「反対の意思を表明するセレモニーに、お付き合いすることはない」とし、沖縄振興策への「影響」を匂わせつつ、翁長氏の「求心力が落ちるのを待つ戦略」だという。「翁長氏には法廷で会えばよい」と言い放った官邸高官がいたようで、このエピソードは官邸の雰囲気をよく伝えている。他に14面には社説が「沖縄の問いに答えよ」と政権の問答無用スタイルに苦言を呈し、38面には反対派が「大きな一歩」と受け止めていることが書かれている。

《朝日》の書きぶりには、どこか冷たさを感じる。翁長氏の論法の弱点は指摘する一方で、安倍政権の奉じる「海兵隊の抑止力」といった幻想には一言の批判もない。沖縄県民の多くが信じていない、基地「移設」というファンタジーをそのまま真実のように扱う姿勢。こうした点は、《東京》を除く全ての本土メディアが批判されなければならない点だが、今朝の《朝日》の冷たさは罪深いように思う。安倍政権の行動の一つ一つに染みわたっている「中央の傲慢さ」は、そのまま多くのメディアにも当てはまるということを、またしても再確認させられた思いだ。

2.コラージュが覆い隠すもの

【読売】1面トップの見出し。「辺野古作業停止を指示」。この文言は《朝日》《毎日》と全く同じ。まあ、他に書きようがないとも言える。冒頭に記したように、写真は、翁長知事と菅官房長官が向き合う形のコラージュになっている。他紙にはない、際立った《読売》の特徴と言って良い。記事の量は他紙に比べて少なく、関連記事も置かれているが3面のスキャナーで、政府側の「対抗策」を色々並べているのみ。翁長知事については「知事選で全面支援を受けた移設反対派からの強い要求に応えるため」とか、「政府が翁長氏の揺さぶりに応じず、移設に向けた作業を着々と進めていることへの危機感」などと推測を重ね、自民党関係者による「政治的パフォーマンスに過ぎない」との発言も投げつけている。

コラージュについては色々な受け取り方があるだろう。確かに、知事と官房長官は「がっぷり四つ」のところがある。仲井眞前知事の「埋め立て承認」を取り消す段取りが整うまでに、工事が進捗してしまうのをどうやったら抑えられるか。翁長氏も様々苦慮しながら、今回の岩礁破砕許可取り消しに至る作戦を考えたのだろう。これから始まる、沖縄県と政府との「闘争」を考えれば、コラージュには意味がある。だが、沖縄県知事と官房長官、両者の対立を表現するコラージュによって、逆に見えにくくなっているものがある。沖縄県民多数の意志だ。名護の市議選、市長選、県知事選、衆議院選で県民はこれ以上ないくらいハッキリした結論を出した。その知事に安倍政権は会うことさえ拒み、さらに、権限に基づいて出した指示にも従わないとなったらどうだろうか。筆者は、法廷闘争云々の前に、もっと深刻な事態が出来する可能性が高いと考える。今回の指示が仮に無視されてしまった場合、沖縄防衛局や海保、警備会社の行動は、全て違法の誹りを免れない。そのときに県民がどのような行動を起こすか。大田昌秀元知事が昨年のインタビュー(『デモクラTV』「新沖縄通信」による取材)で語った言葉が忘れられない。大田さんは新基地建設についてこう言う。「今、政府が強行したらですね、命を掛けても抵抗するという人たちが出てくるわけですよ。ですから、そういった面で血を見る騒ぎになると、かつてのコザ騒動どころじゃなくてですね、沖縄中に怒りが満ちていますから、行政がコントロールできないように事態になりかねないと、それをどういうふうにして防ぐことが出来るかというと、所詮は、辺野古に作るのをね、断念するしかないと思うんですよね。」

 紙面を見る限り、《読売》にこのような県民の姿は全く見えていないと判断せざるを得ない。

3.官房長官とは全く逆の意味で、「日本は法治国家だ」!

【毎日】ももちろん1面トップだが、関連記事が3面の「スキャナー」にあり、ここでなかなか読み応えのある解説がなされている。ある与党県議の話として、「知事は政府が沖縄の要請を受け入れないことを想定しながら、行政の長として手順を踏んできた。今日の会見で県内外に知事の本気度が示せた」と知事を評価し、さらに「日本は法治国家だ。政府の姿勢を国内外が中止しており、官房長官が言うように移設作業が粛々と進むとはまったく思わない」としている。

この県議会議員のこのコメントは他紙には見られない。官房長官が頻りに「日本は法治国家だ」と会見で発言していたことへの当て付けも入っていて、切れが良い。また、沖縄大学の仲地博学長が「沖縄県民を支援する声が国民にどれだけ広がっていくかで、政府の姿勢は変わってくる」という話、法政大学名誉教授の五十嵐敬喜氏が「政府概説を強行すれば現場は沖縄県民の強い抗議に囲まれる。移設作業はさらに困難になるだろう」との見解も重要な側面を指摘している。

4.琉球新報の記事が載る東京の新聞。

【東京】は「辺野古作業の停止指示」と題した一面記事に、他紙と同様の図解に加え、岩礁破砕に関する沖縄県と政府の主張を対比した表、さらに、大浦湾で撮影された海底にめり込むコンクリート製ブロックの写真を添えている。そして後半の中見出しは「政府強硬 法廷闘争も」としている。他紙と比較して、明らかに《東京》の紙面はバランスがとれていて、しかも必要な情報が過不足なく入っている。関連記事は2面と30面、さらに社説と続く。

2面記事は「翁長氏「腹は決めている」」との見出しで、知事との一問一答を左側に、右側は、防衛省関係者に対する取材などで、裁判を見据えたこの先の見通しを語らせているが、一週間の猶予を与えたことについての県幹部の話が興味深い。「国に最大限配慮したものだ。知事は『それでも県の指示を聞かないなら取り消す』という形を作ろうとしている」という。取材が行き届いているなあと思ったら、なんと末尾に(琉球新報取材班)とある。《東京》は琉球新報と記事の交換をしているので、こうした芸当が可能であり、地方の一つである沖縄の声、沖縄県民の声を反映しやすい。30面は、辺野古で座り込んでいる市民らの様子を伝えている。キャンプシュワブゲート前では集会が開かれ、「闘いに応えてくれた」と知事の判断に沸いたという。また会見の時の知事の様子、その日の辺野古海上でも市民らのカヌーが一時海保によって拘束されたことなどを伝える。これらも、おそらくは琉球新報の力による記事ではないかと思われる。こうした問題の際に、必ず市民、住民の側の視点を欠かさないというのは、メディアにとっては決定的に重要なことだと思う。《東京》は、沖縄と311後の福島に対して、差別されてきた地域として特別に篤く情報を取る体制を作り上げている。特に沖縄については、琉球新報との提携によって、一段高い記事内容のリアリティーを保っている。了。


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