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3月26日の<uttiiの電子版ウォッチ>(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150326】

【はじめに】

今朝の各紙は、フランスの旅客機墜落事故の続報を1面のどこかに載せているが、トップに持ってきたのは《読売》のみ。トップには、《朝日》が規制改革会議の提言を取り上げ、不当解雇の「金銭解決制度」導入について書き、《毎日》と《東京》は、昨年暮れの総選挙に関する「一票の格差」裁判の福岡高裁判決で「違憲」判断が出たことで揃った。航空機事故に夢中な《読売》以外は、それぞれ国民の権利に関わる重大な問題を取り上げていて頼もしいけれど、海外メディアによる事故の続報の中には、「操縦士の一人が墜落前にコクピットから閉め出されていた」(ニューヨークタイムズ)との報道もあり、「事実は小説よりも奇なり」的な興味に引きずられ、明日以降、他紙も「事故に夢中」になってしまうかもしれない、などと予感しながら迎えた3月26日、本日の<uttiiの電子版ウォッチ>をご覧ください。

*4月1日から、この<uttiiの電子版ウォッチ>はまぐまぐ!のメルマガに移行します。

メルマガID   :0001652387

メルマガタイトル:uttiiの電子版ウォッチ

対応機器    :PC・携帯向け

表示形式    :テキスト形式

発行周期    :毎週 月・火・水・木・金・土曜日

創刊日     :2015/4/1

登録料金    :324/月(税込)

お申し込みは、http://www.mag2.com/m/0001652387.html まで。

 

【ラインナップ】

1.    《朝日》の本音は規制緩和歓迎?

2.    ボイスレコーダーが知る真実。

3.    無効に踏み込めない裁判所と身を切れない政治家たち。

4.    最高裁は政治家が苦手~「一票の平等」判決が煮え切らない本当の理由。

 

               1.《朝日》の本音は規制緩和歓迎?

【朝日】は、不当解雇の「金銭解決制度」導入を規制改革会議が提言したというニュース。これまでは「金を払えばクビにできる」と組合などに反対され、実現しなかったとする。裁判で不当解雇と認められ、「職場復帰」が可能となっても、実際には金銭で「解決」するケースがほとんどで、裁判やその後の交渉などで時間が掛かっている現状を変えるため、提言は「金銭解決の選択肢を検討すべき」としているという。7面の関連記事、見出しこそ「「安易な解雇」懸念」とするが、この制度は「欧州主要国では一般的」で、現在の日本でも労働者の職場復帰は権利としては認められていないとしたあと、記事内容は解決金の水準という問題に踏み込み、要は金額の問題というまとめ方になっている。企業側の支払いコストを削減するだけでなく、解雇される側の労働者にとってもその方がよいのだという観点は、コメントを求められた濱口桂一郞氏(労働政策研究・研修機構の主席統括研究員)に代弁させている。並んで、日本労働弁護団の佐々木亮弁護士による、「導入されたら適用が広げられてしまう危険」を指摘するコメントも掲載。

「岩盤規制」と名指しされ、規制改革論議ではいつも頭をもたげてきたこのテーマについて、記事のトーンは「今回は仕方がないのではないか」というように読める。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションにせよ、派遣法改定にせよ、労働規制緩和の基本的な考え方は、労働者保護的に作用する特別な法体系としてくみ上げられてきた労働法制全体に対する攻撃に他ならない。「労働法は必要ない」「民法上の契約だけで良い」という類いの発言は、新自由主義的な規制改革会議などの専門委員からたびたびなされてきたと承知している。だとすれば、そのような観点からのまとめ的な記事がなければ、読者はまたしても「ああ、仕方がないのだな」という諦観に誘導されてしまうではないか。ヨーロッパの事例についても、彼の国々では、「尊厳ある労働」が措定され、たとえば正規と非正規の間に賃金差別を許さないような法文化が育った上での「金銭解決」だということを明確にしておくべきだ。「世界が導入している新しい素敵な制度」という誤解を読者に与えて良いものだろうか。《朝日》的な「中立」には、強力な毒が含まれている。

2.ボイスレコーダーが知る真実

【読売】の1面は飛行機事故。見出しは「音声記録
取り出し成功」。コクピット内の会話を自動で記録するコクピット・ボイス・レコーダーが回収され、データの回収に成功したとして、ひしゃげたボイスレコーダーの写真を掲載している。昨日の《朝日》は早々と「テロではない」と示唆するような記事を書いていたが、はたしはてどうだろうか。《読売》も、フランスの内務大臣が「事故であると考えている」と述べており、テロの可能性を否定したとしている。3面の「スキャナー」には、事故機の飛行高度をグーグルマップ上に落とした模式図が載っている。タイトルは「急降下
謎の8分間」。巡航高度に達した後に異常が起こっていることに、航空関係者が首をかしげているという。別の飛行機ないし飛行体との衝突などでもない限り、事故の大半は離着陸時に起こっている。巡航高度1万メートル上空で急減圧が起こった可能性を指摘する現役機長がいるという。事故原因を巡る議論とは別に、《読売》は欧州でLCCの市場シェアが4割に上ること、大手エアラインが危機感を強め、LCCの買収や路線拡大を図っていることなどが書かれており、年間1600万人の乗客数を記録するジャーマンウィングスも、2009年にルフトハンザが買収したものだという。

日航ジャンボ機御巣鷹事故の取材経験から言うと、上空で急減圧が起きたとき、パイロットはまず真っ先に酸素マスクを付け、適切な高度まで降下することを考えるということだった。御巣鷹事故の場合には、パイロットがマスクを付けた形跡がなく、また会話の中でも「つけますか」という問いかけがあったが、答えは記録されていなかった。事故調査委員会のシナリオは、飛行中の隔壁破壊によって急減圧が起こり、機内を吹き抜けた風が補助動力装置と油圧系統を破壊、墜落に至ったというものだったが、パイロットたちのなかにはそのストーリーを信じない人が多かった。その理由が、酸素マスクを付けていなかったという事実だった。今回もCVRが回収されているので、マスクを付けたか否かは既に分かっていることだろう。急減圧が起きても、パイロットが二人ともすぐに意識を失うようなことでもなければ、そのまま墜落するということは考えにくいのではないか。ニューヨークタイムズが、軍高官の話として、パイロットの一人がコクピットの外に閉め出されていたと書いているのが気に掛かる。コクピット外にいたパイロットはドアをたたき、中から応答がないので最後はドアを破ろうとしていた様子が記録されているという。公式の発表はまだないが、いったい何があったのか。

3.   
無効に踏み込めない裁判所と身を切れない政治家たち

【毎日】。昨年暮れの衆議院選挙の区割りを「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとして、弁護士グループが全国の高裁に訴えている全17件の裁判。福岡高裁が17件中初めての「違憲」判決を下した。例によって選挙そのものは無効としなかったが、それでも国会が付け焼き刃的に決め、実施された「0増5減」は格差是正に不十分とした。「0増5減」は、対象選挙区についてだけ「1人別枠方式」を止め、しかし残りの選挙区ではそのままにするという、非常に中途半端な区割り改革だった。「1人別枠方式」の撤廃を求めた09年最高裁判決から3年9ヶ月が経過しており、「是正のための合理的期間も過ぎていると」判断された。5面と28面に関連記事。5面は、衆院の選挙制度調査会で自民、民主、維新、公明の四党がそれぞれの定数削減案を出したというニュース。座長の佐々木毅元東大学長の「難しい課題が横たわっていることを痛感」という言葉を紹介。この調査会ができるまでに29回の各党協議があったということを知るだけで、結論は半永久的に出ないのではないかとの絶望感に襲われる。28面は訴えた側、弁護士サイドの受け止めが書かれている。裁判所の判断について、「人口比例が憲法上の要請と真正面から認め、格差が2倍未満でも駄目だと明確に示した」と評価する一方、「違憲も違憲状態も似たり寄ったりだ。無効まで踏み込むかどうかが一番の問題」とする弁護士もいる。

憲法上の権利を巡って深刻な「差別」が存在し、制度によって温存されているというのに、しかもその是正に弁護士グループの膨大な労力が費やされているというのに、進展の仕方があまりにも遅い。政治家が保身のためにまともな提案一つ出せないのであれば、民間で詳細な区割り案に提案を行い、それをメディアが前面に押し立て、反対する議員を追い詰めていくというようなことでもしないと、投票価値の平等を実現することはできないのではないか。この問題を見ていつも思うことだ。そのメディアの方向性が怪しいので、この話も一向に進みそうにないのだが

《毎日》の5面には、安倍総理が20日の参院予算委で自衛隊を「わが軍」と呼称したことについて、菅官房長官が「防衛を主たる任務とする組織を軍隊と呼ぶなら、自衛隊も軍隊の一つだ」とし、自衛隊は国際法上の「軍隊」だと明言した。総理は同じ委員会の答弁の中で「わが軍」発言の直後に「自衛隊」と言い直し、また菅氏は25日「自衛隊が軍隊とは断言していない。軍隊ということができる、ということまでだ」と言ったという。野党は追及する構えのようだが、やるならば徹底的にやって欲しいものだ。特に菅氏は、屁理屈で誤魔化そうとしている。内閣が一つ飛んでもおかしくない。

    4.最高裁は政治家が苦手~「一票の平等」判決が煮え切らない本当の理由

【東京】は1面に続き、3面の「核心」で、高裁段階の判断が割れる背景を分析している。今回福岡高裁が違憲としたこの裁判、これまでの違憲一件、合憲三件、違憲状態七件と判断が割れている一つの理由は、「0増5減」についての評価に差があるからだ。合憲とした東京高裁では「最大格差は2倍を少し超える程度。格差是正を目指す取り組みも妥当だ」と判示している。これでどうして違憲でないのか分からないけれど、この裁判官は、小選挙区制はこんなものだと思っているのかもしれない。もう一つの理由は、「そもそも最高裁の示す判断枠組みがあいまい」と言うのは一橋大学の只野雅人教授。最高裁が13年の判決で、「段階的な見直しを重ねることも現実的な選択肢」と判示してしまったため、高裁が混乱しているというのだ。確かにこれでは「違憲」という判断を下すのに勇気がいりそうだし、そもそも無効、選挙やり直しを命ずるのは、私が判事でも躊躇するだろう。要は、最高裁が判決のあり方に非常に堅い枠をはめてしまっているようにも見える。(ちなみに、小選挙区区割りを違憲とする訴訟について、《毎日》他は「一票の格差」裁判という言葉で表現するのだが、《東京》は「一票の平等」裁判とする。)

 今日の《東京》、「こちら特報部」は、「文官統制廃止」の動きについて、二人の専門家に話を聞いている。山口大学の纐纈厚副学長は、シビリアンコントロールを「文民統制」と訳したことについて、徹底した民主主義による軍事統制の意味を込め、「民主党製」や「市民統制」とすべきだったという。シビリアンコントロールは、文官統制を通して実現しているといい今回の動きを危ういと見ている。もう一人、『シビリアンの戦争』の著者でもある東大・日本学術振興会特別研究員の三浦瑠麗さんは、「安定した民主主義の元では、シビリアンは軍人より好戦的になる」という。このあたり、軍事評論家の田岡俊次さんと共通するリアルな見方だ。今回の改正があっても、文官と武官の双方から政策提案があるようにすれば、シビリアンコントロールはむしろ強化されるという。了。


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