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秋から冬へ [森の記]

風の強い日は、嫌いではない。

森の中を歩いていると、既に葉の数を減らした樹々が、
それでも風に呼応してゴーッと音をたててくれるので、
その音で自分が包み込まれているように感じられ、寂寥感に苛まれることもない。
ひどく寒い日ならば別だろうが、小春日和の続くこの頃、少々の風はかえって嬉しいくらい。
今朝もそんな感じでした。

それにしても、森の中からは急速に生き物の気配が消えつつある。
夏であれば樹液に群がっていたカナブンやタテハチョウの羽音はもちろん、
あのスズメバチの殺気もどこかに去っていった。
落ち葉の下の、さらに土の中には、ダンゴムシやシデムシなどの「掃除屋」が
ウジャウジャいたはずなのだが、今はそれも疑わしい。

それでも、こんな日の地表には、
本当ならもう少し樹上に留まっているはずだった葉が風に吹かれて落ちてきていて、
黄色や赤の落ち葉の中に、緑の葉を混ぜ込んでいる。
よく見ると、その葉柄には黒い実が付いていて、触るとポロッと落ちた。

なかなかの色使い、森にはまだまだ華やかな雰囲気が漂っている。

「騒々しい奴だな」

あちこちにできた落ち葉の吹き溜まりを、
連れている犬が後足で掻き散らすさまは浅ましいけれど、
まあ、今しかできないんだから仕方がないと諦めることにしよう。

森を出たところには、今まで気が付かなかった椿の壁ができている。
ピカピカの葉っぱに真っ赤な花。このアクの強さも一つの美しさには違いないが、
今朝は、まるで、人間のテリトリーがここから始まる印のように見える。

森からの帰途、誰かの家の庭に植えられたコブシの木が目に入った。
今、あの大きな白い花を見ることはできないけれど、
目の前の樹では、花に負けないくらい大きな葉が一斉に薄黄色に色づき、
互いにこすれあってはカラカラと乾いた音をたてている。
もうまもなく、この葉も地面に落ちてしまうことだろう。

11月が終わろうとしている。

*近隣の小学生が授業の一環として作っていた「芸術作品」ですが、
ビニール紐やガムテープとともに、撤去してくれました。
便乗的に捨てられたゴミはまだ少し残っていますが、そちらのほうは、
僕らが片づけることにしましょう。


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溜池の高齢ガテン、カウント・ダウン

今日は、何か詩人してますね。(何か良いことでもありましたか!?)
私は最近、20年ぶりに生物の学習参考書や問題集を紐解く日々です。
by 溜池の高齢ガテン、カウント・ダウン (2005-11-29 14:53) 

uttii

詩人だなんて、ご冗談を、、、。
自宅近くに毎朝犬の散歩に訪れる小さな森がありまして、
「森の記」はその「観察記」のようなものです。
自分の目に映ったものを
できるだけ客観的な表現に置き換えようと心がけてます。
自分にとっての一種の「解毒剤」ですね。

テレビは特にそうですが、仕事の現場では
あまりにどぎつい「主観」に
晒されることが多く、中毒気味なものですから。
by uttii (2005-11-29 22:39) 

レイチェル

良かったですネ。ビニール紐やガムテープが撤去されて・・・^^v
あちらこちらで、大急ぎで冬支度ですね^^
昔は、普通に落ち葉焚きで焼き芋なんか出来たのに・・・淋しいですね・・ちょっと・・^^
木枯らし・ピー・プー・吹いている~・・・
by レイチェル (2005-11-30 16:00) 

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