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宮内庁長官、能率手帳使ってたらしい [jam THE JAM]

7月20日のジャムザワールド。もうそろそろ暑い夏になってくれてもいいのに、雨が降る中、なんとも涼しい一日でしたね。さて、昭和天皇が靖国神社を参拝しなくなったのは、やはり78年のA級戦犯合祀を嫌ってのことだった。こんな内容の記事を最初に掲載したのは日本経済新聞でした。既に各紙、あるいはテレビ各局も後追いを始めていて、この日、夕方から夜にかけて、ニュースは総てこの内容がトップ項目だったようです。私たちの当夜の番組もヘッドライン冒頭はこのニュースでした。

このニュース、国内政治に甚大な影響を与えずにはおかないでしょう。とくに自民党総裁選を巡る状況が色々動きつつあり、福田氏の不出馬という観測が拡がる中、このスクープが「アジア外交」という争点を前景に押し上げる働きをしたことは間違いないですね。

昭和天皇がA級戦犯合祀を不快に思っていたのではないかということは、これまでも元侍従長などの言葉(後で紹介します)の中から容易に想像されることではありましたが、ここまでハッキリと「心の内」を示す資料が出てきたことには非常に大きな意味があります。「昭和天皇の大御心」をたいするならば、A級戦犯が合祀されている靖国神社に参拝するなど、もってのほかのことになってしまうからです。小泉総理は急遽会見して「(自分が参拝するかしないかとは)関係ないですね」などと平静を装っていましたが、自分が言っていることの意味が分かっているのでしょうか。

いわゆる「分祀論」については、このところ古賀誠・山崎拓の両元自民党幹事長が強く主張していることが知られています。当然、こうした議論に今以上の勢いが出てくることも間違いないでしょう。気の早いTBSなどは、「分祀先として最有力」とされる東郷神社を取材し、靖国神社側の「英断」を促す宮司の言葉を流したりしていました。

私は既に、6月28日発売の雑誌連載(「Oggi」8月号・小学館)の中で、アメリカのブッシュ政権内部にも、日本の対アジア外交に不満を抱き、靖国問題の解決を望む声が出ていることについて書きました。その際、アメリカ側が重要だと指摘しているのは、「中国に文句を言われたから分祀する」のではなく、日本自身の理由付け(Japan`s Reason)が必要だということでした。古賀氏も山崎氏も、そのようなアメリカの「意思」を理解してのことか、「A級戦犯は戦死していないから合祀対象にならない」という、少々技術的な印象のことを言い始めています(合祀された14人のA級戦犯うち、7人は刑死、5人は刑期中の獄死、2人は未決拘禁中の死亡)。確かにその通りだけど、こういう技術的な主張にしておけば、中国や韓国だけでなく国内の参拝批判勢力とも一定の距離を取りながら、それでも「分祀論」を展開することができる。そんなしたたかな計算が見えてきます。

ところが、今回分かった昭和天皇の「心の内」はもっと激しいものでした。富田宮内庁長官の手帳には「私は 或(あ)る時に、A級(戦犯)が合祀され その上 松岡、白取(原文のまま)までもが 筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが」「松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々(やすやす)と 松平は平和に強い考(え)があったと思うのに 親の心子知らずと思っている」「だから私(は)あれ以来参拝していない それが私の心だ」と記されていたわけですね。ということは、筑波宮司のときには合祀を阻止していたのに、松平慶民宮内大臣の息子である松平永芳宮司になったら合祀してしまった。そのことに強い不快の念を抱かれ、以後、参拝を止められたという意味の記述でしょう。A級戦犯の中でも、松岡洋右元外相と白鳥敏夫元イタリア大使が特に嫌われていたことも伺われる。

今回の資料が出るまで、この問題についてしばしば引用された本に、徳川義寛侍従長の言葉を記した『侍従長の遺言』というものがあるけれど、そのなかに「靖国神社は元来、国を安らかにするつもりで奮戦して亡くなった人を祀るはずなのであって、国を危うきに至らしめたとされた人も合祀するのでは、異論も出るでしょう」と言っている部分が出てくる。で、侍従長は、昭和天皇の次の御製(87年8月15日)については、「合祀がおかしいとも、それでごたつくのがおかしいとも、どちらともとれるようなものにしていただいた」と書いている。

ここにいう、昭和天皇の御製とは。

この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれいはふかし

「どちらでもとれるように」と言っていた侍従長だけど、この歌が昭和天皇の歌集『おほうなばら』に採録されたときには、わざわざ解題に「靖国とは国をやすらかにすることであるが、とご心配になっていた」と、いわば種明かしのようなこともしていた。目立つ形でハッキリと「昭和天皇の大御心」を世間に明らかにするようなことはしたくないけど、でも、分かって欲しいんだよね、と言いたそうに見える侍従長。そういうことだったのでしょう。

既に、小泉内閣の現職閣僚のなかからも「分祀論」への共感を口にする人が出てきているようです。総理として靖国参拝を繰り返してきた小泉純一郎総理以上に強硬な「靖国派」と目され、次期総裁候補として最右翼の安倍晋三官房長官はこの問題にどう対応していくのか。アジア外交を争点に掲げて福田康夫氏やその他の候補が安倍氏に挑戦する形になるのかならないのか。自民党総裁選は9月。さらに、8月15日の終戦記念日に何が起こるのか、このことが総裁選の戦われ方を左右することになるのでしょう。今年の夏は、本当に暑い夏になりそうですね。


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