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インサイダー容疑者は日経の模範社員? [ブランチ業務日誌]

ニュースをチャンスに!日本経済新聞!

こんなコマーシャルがテレビで流れてビックリしてしまった。ジャーナリズムが位置づける「ニュースの価値」は、金銭に結びつくとは限らないと考えるのが普通なのに、この「チャンス」は「ビジネスチャンス」そのものであり、早い話が、「ニュースで儲けよう!」と言っているに等しい。実にアッケラカンとしたものだと思いませんか。そして、このキャッチフレーズ通りにやって大儲けしていたのが、他ならぬ日経社員だった、というのが今回の事件の一番大事なところ、いわゆる「キモ」じゃないでしょうか。

「今回の事件」とは、勿論、広告局所属の若い日経社員が法定広告掲載の事前情報を手に入れ、インサイダー取引を重ねていた事件のこと。かなり以前からやっていたらしい。値上がり必至の株を広告掲載前に買い込み、掲載後に売り抜けるというあまりにも分かりやすい手口で儲けた額は3000万円に達したというではないか。まさしく「ニュースをチャンスに」してくれちゃったわけだけど、当然ながらインサイダー取引という立派な犯罪なんですね。

昨日、日経の社長が謝罪会見を開いた。社長は「言論報道機関としてあってはならない不祥事で」とか言っていたけど、聞いていてちょっとニヤリとしてしまった。確かに日経は、経済の世界でどんな動きがあるのか、最も早く、しかもある意味で深い情報をもたらす新聞として、朝毎読とは全く違うスタンスのユニークな新聞だ。まさしく業界・経済界のインサイダーであること、これは間違いない。だが、日経が普通の意味で言論報道機関といえるのかどうか、そこには疑問符がつく。まあ、誌面批評までするつもりはないから概括的に言うと、あまりにも「資本に忠実」なのですね。事実を伝えるというよりは、「景気拡大の旗振り役」といった趣さえある。でも、だから悪いとまでは言っていない。そういう新聞ならではの良い点もある。

7月20日の一面を飾った「昭和天皇がA級戦犯合祀に不快感」の大スクープも、ある意味で「資本に忠実」な同新聞の面目躍如たるところがあったのではないかと密かに思っている。経済同友会がA級戦犯の靖国神社からの分祀論をまとめ上げたりしたことから分かるように、経済界にとって靖国神社問題は是非とも解決しなければならない問題になっている。アジア諸国、特に中国との関係がギクシャクしたままでは、なお一層の景気拡大は望めないというのが経済界のホンネなのではないか。だとしたら、あのスクープはまさしく日経らしい記事だったことになる。その後の朝日新聞の調査によれば、小泉総理が任期中に靖国神社を参拝することに対する反対は57パーセント、次期首相の参拝に対しては反対が60パーセントに及んだ。実に影響の大きかったことが分かる。まあ、9月の自民党総裁選そのものは既に安倍晋三独走のデキレース状態になっているから、その帰趨に影響を与えることはないかもしれないけど、安倍氏の取りうる政策選択の幅に対して、この調査結果は重くのしかかってくるんじゃないだろうか。他候補のなかには、谷垣氏のように、首相になった場合には「靖国神社参拝を自粛する」と明言する人も出ている。日経の記事がきっかけでこれだけ大きな動きが実際に生まれたということにもなる。

かなり前のことだが、尊敬する法学者からこんな言葉を聞いたことがあった。「日本経済新聞、結構いいと思うんですよ。社会が左側に偏っているときには右側の議論を反映するんだけど、社会全体が右寄りになっているときには逆に左側かと思うような論調になる。ある意味で資本の論理というのは左右にぶれないんですね」と。日経新聞がどんな論調になっているか、どんな役割を果たしているかを見れば、世の中が今、どちらの方向に向いているのかが分かる。いや、そんなことしないでも分かるか、、、。

 


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