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来月創刊予定のメルマガについて(2) [uttiiの電子版ウォッチ]

電子版ウォッチ(無料版)の二日目です。3月5日の分をお読みいただく前に………。

 私が、新聞の紙面批評を書こうと思い立ったきっかけの一つは、昨年夏の朝日新聞「従軍慰安婦記事撤回」事件です。ここでは撤回された記事そのものについては触れませんが、私には、その後の《朝日》に「元気がない」ことが非常に気懸かりでした。新聞紙面には、各社が持っている取材上の力量の違いはもちろん、新聞社としての歴史、政治勢力との距離、あるいは編集者の考え方の微妙な差、会社の「勢い」のようなものも確実に反映していると思われます。そうしたものを可能な限り読み取って、その反映の結果として伝わる情報のなかに、メディアの本義に悖るようなものがあれば、それは厳しく指摘し、あるいは逆のケースでは励ますなどのことをしなければならないのではないか。自分がそんな大役に相応しいなどとは思いませんが、とりあえず、何かやってみる価値はあるだろうと考えたのです。

 もう一つ。私の「本願地」であるテレビ業界のことがあります。民放各局はともかく、NHKの振る舞いのあまりの酷さに、怒り心頭の思いから抜けだすことができませんでした。会長が暴言を吐く、キャスターが政権寄りのコメントを連発する、ゲストの発言をアナウンサーが制止するなども許しがたいことですが、私が一番腹に据えかねる思いをしたのは、取材と編集における不適切な偏りです。ニュースでは通常考えられないサイズで、靖国訪問直後の安倍総理のインタビュー映像を切り取る、「各界の反応」と称して6人連続で自民党議員のインタビューを流すなど、一つは「映像の言語」を悪用し、もう一つは暴力的な編集を駆使して、政権のプロパガンダに相務めている(この話、「デモくらジオ」では何回かしゃべりましたので、リスナーの方は既にお聞き及びかと思います)。これは放っておいてはまずいと思いました。その後、心あるNHK内部の方に私の考えを直接伝えるなどの機会もありましたが、このメディア状況に対しては、やはり具体的な指摘をその都度行い、大勢のみなさんに直接お伝えしていかなければならないと思いました。

というわけで、まだ「電子版ウォッチ」ほどにも内容・形式を詰め切れていませんが、7月をメドに、テレビのニュースを対象とした「ウォッチ」を始めたいと考えています。どのテレビのどのニュース番組でこんなことを言っていた、という情報は、既にツイッターとYouTubeの世界で事実上共有されるようになっていますが、映像文化の次元で、テレビ情報のリテラシーを高めていく努力は必要ではないかと考えています。これまた私には荷が重いことなのですが、やはり何か始めなければと考えた次第です。またその節には具体的にお知らせしますので、よろしくお願いいたします。

では、今日の「uttiiの電子版ウォッチ」、目を通してみてください。 

【20150305】

イチメン・トップス

 【朝日】は、1面トップで安保法制に関する最新かつまとめ的な記事を置いている。《朝日》らしい、冷静な筆致。「「存立事態」新設提案へ」という見出しのもとに、「存立事態」を公明党との与党協議にかける方針を政府が固めたとある。2月13日以来の与党協議で提案された「グレーゾーン事態」「邦人救出、船舶検査、周辺事態法改正、恒久法制定、PKO協力法改正などの国際貢献」、そして今回の「存立事態新設」と、一連の提案が表にまとめられており、公明党が何を呑まされてきたか、またこれから何を呑まされるのかが明瞭に示されている。

3面の関連記事は、こうした手続きのもとに進められる安全保障法制の大「改革」が、「乱立
五つの「事態」」という傑作な見出しのもとに整理されている。日本への攻撃を意味する「武力攻撃事態」と「武力攻撃予測事態」、それに「緊急対処事態」に加え、他国への攻撃などを意味する新設の「存立事態」と「重要影響事態」が並べられている。なにやら今度のテストに出そうな案配だが、実相は、世界中どこであれ、自衛隊が集団的自衛権の名の下に米国の戦争に駆り出されて武力を行使し、あるいは後方支援の名の下に、軍事作戦に協力させられること、これが可能となるに他ならないと愚考する。「乱立」のあとに「やりたい放題」が続いているのだが、そこを書かないのが「上品」な《朝日》流。もう一歩踏み込んで、ストレートに書けば良いのに(独り言)。

 この1面と3面の関係は、《朝日》の編集方針が、良くも悪くもオーソドックスに行われていることを示していると思う。1面では、取材に基づいて判明した、今日これから起こることが確実な出来事について、警鐘をならす意味合いを含めて正確に伝えているし、3面では一連の事態に困惑する読者に対して、分析とまとめ的な視点を提供していて有益だ。だが、1面で論点を明確に適示する東京新聞のような行き方なら、トップに「乱立する五つの「事態」」と書く方法もあるのではないか。与党協議のニュースだが、内容は「自衛権行使の名の下に、歯止めなき武力行使の危険」ということなのだから。


 【読売】は、なんと春闘のニュースがトップ。「車ベア 前年越え」として、景気のよい話を掲げている。当然と言えば当然だが、《読売》の話は大手に限られていて、紹介されているのは、円安の恩恵を被り、消費税増税でも巨額の戻し税で潤っている可能性の高い自動車産業のケースのみだ。それでも、労組が6000円台の要求で足並みをそろえるのに対して、4000~5000円が攻防水準だと会社側は言っているとも。

 気になる記載は、「デフレ脱却に向けた政府の賃上げ要請も踏まえ」としているあたりだ。《読売》には、政権の安定装置としての役割が肌に染みついているのだろう。こうした細かい叙述の「工夫」が、賃上げは安倍政権のおかげ、という意味合いを記事全面に染み渡らせる、そんな効果を生んでいるように思える。

 関連記事が10面にあるというので見てみたが、これは関連でも何でもない。自動車労組の統一交渉の話で、要は、1面同様、自動車業界だけの話なのだ。記事末尾には、わずかに中小企業のことも出てくる。自動車総連の幹部が「従業員が299人以下の企業は収益状況が悪い企業もある。」と語り、また記者も「中小企業側も大手との賃金格差が広がりすぎれば、人材確保が難しくなる」などと書いている。トリクルダウン幻想の延命を図るのも大変なようだ。


 【毎日】は、今日国会に提出される、18歳選挙権のニュース。昨年6月の改正国民投票法で有権者が「18歳以上」となったことに対応し、ようやく公選法の改正も行われようとしている。早ければ来年夏の参議院選挙から実施されるが、今国会での成立がまたしても怪しくなってきていて、「政治とカネ」問題で国会審議が紛糾すれば、またしても廃案の憂き目に遭うかもしれないというタッチの記事になっている。

この記事には関連記事がない。別になくてもよいとは思うのだが、なぜこの記事が1面トップに来たのか。熟慮の末、万策尽きてここに至ったのなら仕方がないが、「このへんにしておこう」という妥協の結果なのだとしたらちょっと情けない。他に1面候補はたくさんあって、たとえば9面には、「イスラム国」の処刑役で有名になってしまったジハーディー・ジョンがなぜ過激派になってしまったかについての非常に興味深い独自記事がある。いくらなんでもそんな人物の記事を1面トップに載せられないというなら、2面の「もんじゅ運転禁止命令 年内の解除困難に」でも良かったのではないか。これなら、核燃サイクルの話、日本原電、あるいは東電の話を含めて、山のように関連記事もありそうだ。読者にどんな価値を届けたら良いのか、その「発見」にもっと努力すべきではないかと愚考する。

 

【東京】は、シェアハウスに暮らすひとり親家庭に対する児童扶養手当の支給が再開されるという、東京都国立市のケースを1面トップに取り上げる。もともと東京新聞が昨年末から独走して報じているテーマで、《朝日》は今年になって後追い。同じシェアハウスに男性がいるというだけで事実婚と見なし、ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当を打ち切るという、なんとも杓子定規なひどい行政行為が行われていた。議会で問題となり、厚労省も先月になって「適正化」の指示を出すにおよび、支給が再開されることになった。とにかく、社会保障関係については、油断をするとすぐに支給を減らしたり無くしたり、あるいはそもそも支給しないなどのことが起こってしまう。典型的なのは生活保護で、まるで受給者が不当利得を得ているかのような印象が政治家によるバッシングなどとそれを真に受けたメディアの報道姿勢等によって醸成されてしまった。そうした世論の気分を背景に、末端行政による「水際作戦」がはびこって申請希望者を排除する、あるいは、生活に困窮しているのに申請を諦めてしまう人たちが続出したりしているのが現状だ。国立市のケースは、一つの事例に過ぎないかもしれないが、こうした事実を発掘して大きな問題を指摘していくのは重要なことだと思う。了 


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