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来月創刊予定のメルマガについて(4) [uttiiの電子版ウォッチ]

午前中にアップする予定が午後三時過ぎにずれ込んでしまいました。今日3月9日の分です。目を通していただければ幸いです。


 【20150309】

今朝の各紙は、東日本大震災から4年の3月11日を控えて、いわば「震災メモリアルウィーク」がスタートした趣がある。《朝日》と《毎日》がそれぞれ被災地の問題を1面トップに掲げるほか、《読売》は1面左肩に前日日曜日が「追悼の日曜日」になったと写真入りで報じている。《東京》は1面トップを歴史発掘モノに譲ったけれども、3面には同紙に定期的に登場する文化人のひとり、高村薫さんに「原発と日本」について語らせ、社説も「福島の苦しみ正面から」と東日本大震災四年に寄せる内容だ。今日という日の捉え方にも、各紙それぞれの特徴が出ている3月9日。では個別に見ていくことにしよう。

ラインナップ

1.人口流出が続く東北を、国は見捨ててしまうのか?

2.オリンピック景気は全国に波及するか?

3.放射線を浴び続けるボランティアの身体も心配だ。

4.日米開戦秘史~超一級極秘資料発見!


 

1.人口流出が続く東北を、国は見捨ててしまうのか?

【朝日】は、震災四年の企画として、「被災地続く人口減」の大きな見出しを1面トップに。被害の大きかった42自治体のうち、復興事業関係で全国から転入者があった仙台市とその周辺を除き、人口流出が止まらない現状をデータで示した。比較時点は震災直前の2011年3月1日と今年2月1日。このデータには「震災による死者を含む」という点、日本全体で見ても0.8%の減少があり、人口が減少した都道府県の平均はマイナス1.7%だったなど、いくつかの点を「補正」しなければ軽々には判断できないけれども、それでも陸前高田のマイナス16.1%、女川町のマイナス29.1%、山元町のマイナス23.6%などは驚く数字だ。また福島県では、原発事故の影響で軒並み10%台の減少率。そのどこもが「放射線量が高く、長期間帰還できない区域を抱える」自治体だ。

《朝日》のまとめ方は「日本の多くの地方で進む人口減が、被災地では、震災と原発を機に加速していると言える」という、至極真っ当と言うか、その通りとしか言いようのないもの。むしろ、「原発避難先定住の動き」と最後に小見出しを置いた部分が重要と思われた。避難指示区域に家を持つ人が避難先などで土地・家屋を買えば不動産取得税が軽くなる特例措置の適用件数が、相当な数にのぼっているという。メディアも、「減少」の側だけでなく、「増加」の側で何が起きているのか、視点を移していく必要があるのではないか。

その記事の左には、竹下復興大臣がNHKの討論番組で「被災した一人ひとり、さらに市町村も自立する強い意志を持ってほしい」と2016年度以降の復興予算については自治体に負担を一部求める考えを口にしたため、村井知事(宮城)や達増知事(岩手)の反発を招いたことが記事になっている。なんて、思慮分別のない大臣なのだろう。

2.オリンピック景気は全国に波及するか?

【読売】の1面トップは、「東京五輪で地方創生」として、6月に全国70の市町村長が首長連合を発足させると伝えている。オリンピックにあやかって地方特産品の売り込みを国内外に図るらしいが、なんだか社会科の教科書を読んでいるかのようで、「金沢市の九谷焼」「新潟県燕市の洋食器」「京都府丹後市の丹後ちりめん」など、絵付きで紹介されていて、あまりにも緩すぎる。これが日本最大部数を誇る大新聞の1面トップかと思うと、全身から力が抜けていく思いがする。こんな時には、「落とすわけにはいかないが目立たせたくない記事」が隠れていることも多いのだが、今日はそこまでの事情はなさそうだ。単に、深い取材のできたものがなかっただけなのか。それはそれで報道機関としては心配な状態だが。

3.放射線を浴び続けるボランティアの身体も心配だ。

 【毎日】はキチンと問題を提起している。1面トップに「20キロ圏ボランティア3万人」と題し、「除染2500回 被ばく管理外」との記事。国の直轄による除染特別地域で活動したボランティアが、少なくとも延べ3万人いたとの独自取材記事。「労働者」でないために、法令上の被ばく管理の対象外とのこと。「国は線量が比較的低く市町村が除染する地域については活動紹介をしているが、国直轄地域の活動はほとんど把握していない」という。国直轄地域の方がルーズだというのはなぜなのか。首をかしげてしまう内容だ。

なお、11面と12面の見開き全面を使って「検証大震災」が展開されている。こちらは関連記事と言うよりも、むしろ記事本体が11面12面で、1面は記事全体がリードのような役割。今春から始まる、事故直後に現場で作業に当たった二万人の健康影響調査の頼りなさ。今後増えることが予想される労災申請。市町村除染と国直轄除染の双方で杜撰さが指摘される作業員の被ばく管理。ボランティアは、除染作業員ほどの継続性はないにせよ、業者が入らないような帰還困難区域での一時帰宅に付き添うなどのこともあるという。

4.日米開戦秘史~超一級極秘資料発見!

【東京】は、他紙と全く違う1面トップ。日米開戦前に敵方の経済力を探る目的で設置された「陸軍省戦争経済研究班」(通称、「秋丸機関」。有沢弘巳、中山伊知郎他)の機密報告書の一部が発見されたという大ニュース。大学の教員が古書店で発見したという。英米両国の経済情報を収集・分析し、両国の強大さを指摘するデータを示しながら、「開戦回避の提言はなく」「軍部の意向を無視できなかった事情がうかがえる」としている。記事は、これらの報告書が1941年夏に提出されたと見られるにもかかわらず、日本が同年7月末「南部仏印進駐」に踏み切ったことを捉え、軍は都合良く報告書を解釈したのではないかと推測を記している。東京新聞の文化部は常に独自の取材成果を見せてくれている。

 1面左肩の「揺れる政策 陰る太陽光」の記事は、全村避難が続く福島県飯舘村で、太陽光発電を事業化する「飯舘電力」を取り上げている。再生エネルギー発電の奨励から、買い取り方針が揺らぐにつれて経営が苦しくなっていく実情を描く。記事は3面に続き、困難ななかでも壁を乗り越えようとする社長の「飯舘村で売れるもんは、もう電気ぐらいしかねえんだ」という悲痛な言葉を紹介。最後に同社長の事業目的の冒頭に掲げた、「飯舘村民の自立と再生を促し、自身と尊厳を取り戻す」との重い言葉を記している。

この3面は、1面から続く上記「飯舘電力」記事が、あと二本の原発記事を引き連れる風情になっている。一つは、作家高村薫へのインタビュー、もう一つは、訪日直前のメルケル独首相に関する記事。メルケル氏はドイツが早期の脱原発を決意し、再生可能エネルギーの普及を進めているとし、「日本も同じ道を歩むべきだ」と呼びかけたという。誠にもっともな話だけに、こちらはぐうの音も出ない。了


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