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来月創刊予定のメルマガについて(5) [uttiiの電子版ウォッチ]

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 【20150310】

10万人以上が犠牲となった東京大空襲から70年の今日、ドイツのメルケル首相訪日を各紙はどのように伝えたか。ハッキリと新聞の「個性」が現れ、際立った違いを見せた3月10日の朝刊紙面。一つ一つ紹介、分析していこう。

 ラインナップ

1.メルケルは安部と天皇に会うためにやってきた。

2.7年ぶりか、1年に5回も電話会談している、か。

3.ドイツ首相はバランスの人か?

4.震災関連死の3人に2人は原発関連死

 

 

1.メルケルは安部と天皇に会うためにやってきた。

【朝日】のメルケル訪日記事は、なかなか興味深い作りになっている。大見出しは縦に「日独首脳、ウクライナ安定へ連携」と置きながら、それよりも大きな文字で横に「過去の総括、和解の前提」と掲げている。少なくとも客観的には、歴史認識問題が最重要な論点であり、この訪問の「キモ」は歴史認識問題だったという評価だ。写真も、共同会見のツーショットだが、諄々と何かを説いている風情のメルケル氏の横で、叱られて呆然としている体の安倍氏の顔が後方に見えている。意味はハッキリ伝わる。

 一面記事後半の中見出しには、「踏み込んだメルケル氏」として、「今回の訪日で歴史認識にここまで言及するとは、事前には予想されていなかった」と朝日記者も踏み込んでいて、「日中韓の緊張が、地理的には遠く離れたドイツにも看過できない現実的なリスクになっていることの現れ」とまで言っている。

 冒頭の短いリードの後には、朝刊紙面6カ所に関連記事のあることが示され、ワンクリックでジャンプできるようになっているのだが、ここにも一つの主張が込められている。「2面=日独の距離感」「6面=技術協力に意欲」と続き、社説を経て最後は「38面=天皇陛下と会見」とある。38面の記事は親しそうに会見する天皇とメルケル氏、通訳のスリーショット。メルケル氏は「今年は戦後70年であり、戦争がない時代を望んでいたが、現在ウクライナで深刻な事態が生じていて心配している」と言及。天皇も「日本にとっても戦後70年の年だ」、「長崎、広島の原爆は影響が長く続いている」と話したという。(天皇との会見を報じたのは《朝日》だけではなかったが、《読売》は故ワイツゼッカー元大統領との思い出話とウクライナの事態が早期に解決することを願う云々のみ。《東京》も同様の内容ながら、朝日が報じた戦後70年と原爆の影響についても記している。《毎日》は全く報じなかった。)天皇とメルケル氏の会見を報じた三社の記事は、いずれも天皇を主語として書かれてはいるが、《朝日》の場合は1面で関連記事を示すところに「天皇陛下と会見」としている。つまりメルケル首相は安部首相だけでなく、天皇にも会いに来たのだということが表現されている。その天皇は年頭に当たって、戦争がもたらした多くの犠牲に触れ、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なこと」と述べた人であることを、メルケル氏はもちろん承知していたことだろう。このことを見ても、メルケル訪日の最大課題が歴史認識問題であることを窺わせる記事となっている。

2.7年ぶりか、1年に5回も電話会談している、か。

【読売】は、メルケル訪日をもっぱらウクライナ問題と国連安保理改革、対「イスラム国」などへの対処が目的だったと言い切りたいらしい。「歴史認識」や「原発」といったテーマについては、1面からは完全にスクリーンアウトされている。三面の「スキャナー」でもメルケル訪日は大きく扱われているが、両首脳は「昨年一年間、電話を含め5回の会談を実施」、「会談でも互いに「シンゾウ」「アンゲラ」とファーストネームで呼び合うなど、和やかな雰囲気に包まれた」と、読んでいて気分が悪くなってくるような文章。無理矢理仲良しにしないでも良いだろうに。

気になったのは「ウクライナ紛争や「イスラム国」対策などで、国際社会の脅威に立ち向かう姿勢を明確にしてきた」ドイツが、「積極的平和主義を掲げる日本との連携」を重視していると記したあたりだ。そのうち「日独同盟」などと言い出しそうな勢いだ。とくに「イスラム国」と戦うクルド人部隊に対する武器供与実施のくだり。紛争地域への武器供与を自粛していたドイツが方針転換をしたと強調する文面は、安倍内閣による「武器輸出禁止3原則」の撤廃に通ずる話。「ドイツだってやっているのだ」と強調したいようだ。歴史認識に関する記述も末尾に若干記されているが、あくまで「東アジア情勢」「安保環境巡り議論」という枠内での記述。「日本と中国、韓国両国が対立する戦前・戦中の歴史認識問題を巡っては、メルケル氏は注意深く距離を置いている」との評価。これは《毎日》にも共通する書き方だが、《朝日》とは正反対の評価ということになる。

3.ドイツ首相はバランスの人か?

【毎日】も《読売》同様1面にはウクライナ問題だけで、原発と歴史認識については全く触れず。三面の関連記事のなかで歴史認識の問題に触れる。だが、会談では、ナチスドイツの行為の検証という経験について「短く触れた」のみという評価。日中韓それぞれと友好関係を維持したいので、三国間の対立とは距離を置きたいという読み込みをしている。

なお原発については、前日の講演のなかで「(福島のような事故が起きたのを目の当たりにし)予想できないリスクが生じることを認識した」とメルケル氏が言っていることに注目。会談の中では原発に関する議論はなかったという「政府筋」の話を紹介して記事を閉じている。

ちなみに【東京】は昨日、訪日直前の講演で「日本も脱原発の方向に行くべきだ」と言及したと報じたが、そうした内容の記事は今朝の《毎日》には見当たらない。

4.震災関連死の3人に2人は原発関連死

【東京】は、《毎日》が原発関連で引用した、メルケル氏の来日後の講演について、1面右下の紹介コーナーで、「過去と向き合うことで国際社会に。来日したドイツのメルケル首相が講演」と伝え、2面で「過去の総括
和解の前提」との見出しのもと、首脳会談の様子を写真入りで大きく伝えている。だが、《東京》が最も重視するのは、「首脳会談では話題にならなかった」、日独であまりにも対照的な、震災後の原発政策についてだ。2面でメルケル首相来日を伝える記事の左側に、日独の「原発の現状」について比較表を掲げ、その下に「原発政策 日独落差」との見出しで記事を置いている。中身は、会談後の両首脳に対する記者会見で、ドイツのメディアが日本の再稼働路線について「ドイツは脱原発なのになぜ?」と質問、安倍総理が「国民に対し低廉で安定的なエネルギー供給をしていく責任がある」という従来からのお題目を唱えたことを記す。まあ、彼我の違いは改めて説明するまでもないけれど、記事末尾で「安倍首相は共同会見で、ドイツを「グローバルパートナー」と持ち上げたが、原発政策に関してはパートナーとは言えない」と結んでいる。

 順序が逆になったが、《東京》の1面トップは、「原発関連死1232人に」との記事。震災の間接的な影響による死亡として市町村が震災関連死と認めれば災害弔慰金支払いの対象となるが、《東京》はそのうち、東電福島第一原発事故で避難を迫られ、体調が悪化して病死や自殺した事例を「原発関連死」と名付け、震災から2年後の13年3月から半年ごとに調査結果を公表している。津波の被害を含む「震災関連死」と「原発関連死」を切り分けることで分かることがある。調査の結果、「原発関連死」はこの一年で184人増え、被害が拡大し続けている状況が明らかになったという。「震災関連死」の65%までが「原発関連死」。改めて、原発事故が今も全く収束にはほど遠い状況だということがハッキリする。

補遺

 今日の各紙、「戦後70年談話」について検討する「21世紀構想懇談会」の北岡伸一座長代理が、昨日のシンポジウムで、「私は安部さんに『日本は侵略した』と言ってほしい」と述べたことが大きく扱われている。当然の常識に属することなのだが、安倍ブレーンとしての北岡氏のこれまでの言動からすると、まさしく「ニュースに値する発言」だ。《朝日》は4面、《毎日》は2面に写真付きで。《東京》は1面で写真付きの扱い。メルケル訪日をどう捉えるかとも関わってくることで、8月の談話に向けての基本的な動きを捉えたものと評価できる。ところが《読売》は、4面の一番下にベタ記事扱い。書かざるを得ないけれども「なるべく読むなよ!」と言いたいかのようだった。安倍政権と《読売》にとって具合の悪い内容とみえる。こんなところにも新聞の「個性」が表出する。


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