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3月12日のuttiiの電子版ウォッチ(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

日の境を超えてしまいました。とりあえず3月12日の「電子版ウォッチ」をアップします。もうあと2時間半もすれば3月13日付け朝刊が出そろう時間帯です。とりあえずお休みなさい-。 

【20150312】

 今朝の各紙は、昨日各地で行われた追悼行事の取材を元に、ほぼ一様に「鎮魂」のイメージで綴られている。だが、詳しく観ていくと、それぞれに際だった特徴のあることが分かる。 悲しいことだが、《朝日》の劣化ぶりには本当にガッカリさせられる。

1.またしても生煮えの朝日記事

2.「安全」に「風評」、なぜ括弧をつけるのだろう?

3.震災の日の翌日くらい、311で1面を埋めてみたらいいのに。

4.式典を丁寧に報じようとすれば、こういう形になる。

 

1.またしても生煮えの朝日記事

 【朝日】の1面には、宮城県南三陸町の、骨格だけが残った防災対策庁舎の前で手を合わせる人々の姿が紹介されている。その下には、政府主催の追悼式で宮城県代表として追悼の言葉を述べた菅原彩加さんが写真入りで紹介されている。石巻で暮らしていた当時15歳の菅原さんは、がれきに挟まれて動けなくなっていた母を助けることができなかった痛切な体験を語っている。この菅原さんについては、《東京》も1面の記事の中で、写真入りで紹介。ジャーナリストを目指して今春から大学に通うという。

 《朝日》の1面、写真下には原発関連の記事。福島県内の約3600カ所のモニタリングポストのうち、88%で目安となる毎時0.23マイクロシーベルト(年1ミリシーベルトに相当)を下回っていたことが分かったという。同時に、第一原発周辺で役場ごと避難中の大熊町や双葉町など7町村で目安を下回ったのは22%。最高値は大熊町内の18.30マイクロシーベルトだったと記している。

関連記事が2面にあり、福島県内の空間線量について地図や図表が掲載されている。見出しは「線量低下
福島まだら」。観光業の現状、帰還困難区域の高い線量についての取材記が付いているが、記者は「視点」と名付けられた論評部分で、「国や県は、現在、公表している生データに加え、情報のより分かりやすい示し方を工夫すべきだ。我々も、より多くの客観データに基づいて福島の現状を見つめ、未来を考える土壌を作っていきたい」と言っている。この部分はあまりにも不十分なまとめと言わざるを得ない。総理や官房長官が海への汚染の広がりについて「コントロールされている」と虚言を弄し続けていること、東電は汚染水の漏出についてこの間も情報を隠蔽し続けていたこと、自主避難者の生活支援、あるいは健康調査について定めた「こども被災者生活支援法」が政府によって骨抜きにされていること、そして低線量被ばくについての不安、除染の効果についての疑義など、まとめの中で触れなければならない事柄は山ほどあるのに、一つも言及がない。《朝日》は行儀良く「情報のより分かりやすい示し方を工夫すべき」などと提案するが、そんな課題は、官僚が1時間も残業すれば片付いてしまうようなことではないか。原発事故についての基本的な「怒り」を忘れた記事など、何の意味があるのかと問いたい。

2.「安全」に「風評」、なぜ括弧をつけるのだろう?

 【読売】も、1面トップは「鎮魂の日 誓う復興」との大見出しに、宮城県石巻市で児童と教職員併せて84人が犠牲となった大川小学校で黙祷する遺族らの写真を掲載。その下の写真には、政府主催の追悼式で黙祷する天皇皇后の姿。3面のスキャナーには、原発事故関連記事として、「福島産「安全」なのに」「魚・コメ・肉「風評」消えず」との見出しで、福島県産農水産物の回復傾向が著しいのに、「一度生じた風評被害の克服は容易ではない」との記事。漁業では、試験操業で漁獲できる魚種が大幅に拡大できる状況になったのに、汚染水の海洋流出が発覚、「また消費者が離れかねない」(漁協組合長)。コメも全袋検査を続けていて規制値越えのものもなくなったが、値段は全国平均よりもかなり低い。桃でも牛肉でも事情は同じ。消費者庁の調査で「福島県産の食品購入をためらう」と答えたのは今年2月でまだ17.4%もある。意識は簡単には変わらない、と。

 《読売》はシンプルに「福島産は安全」という前提で記事を作っているのかと思ったが、ちょっと違うのかもしれないと思われた。この見出しが物議を醸しかねないのだ。「安全」、「風評」と、いずれも括弧がついているからだ。括弧付きの「安全」は、本当は安全かどうか分からないという意味であり、同様に「風評」は、デマではなくて本当かもしれないという意味だろう。《読売》は、安全性に疑問を持っていると匂わせたいのだろうか。他方、記事の中身は「福島産は安全」という見方に貫かれているので、この見出しでは、それこそ記事への疑念を招き、かえって風評を助長することになるのではないか。取材原稿を書いた記者が、編集担当のデスクに向かって「なんで括弧なんか付けるんですか?!」と怒鳴り込んでいるようなら、まだ救いはあるのだが。

原発事故は、政府やメディアへの信頼を大きく傷付けたが、同時に、科学と科学者に対する不信感を著しく強めることになった。規制値以下であれば本当に安全なのかと人々は疑問に感じているのではないか。「君子危うきに近寄らず」を地でいけば、福島の産品は敬遠するという行動パターンが選択されがちであって、そのことで誰を責めることもできまい。福島県の生産者には厳しい時代が続くが、政府やメディアだけでなく、科学と科学者への信頼も回復していかなければ、根本的な問題解決、つまり福島産の食べ物を低く見るような傾向が払拭される日は遠いような気がする。また、虚言と隠蔽を事とする政府が「食べて応援」と言ったところで、信じてもらえるわけもない。遠回りのようだが、安倍総理は何よりも早く、事故が収束していないこと、汚染水はコントロールされていないことを認め、その対策に全力を傾注することが、福島県産品の信用を回復していく早道なのではないか。《読売》にも、そんな風に政権を叱りつけてもらえないものだろうか。

3.震災の日の翌日くらい、311で1面を埋めてみたらいいのに。

【毎日】も、基本的には鎮魂のイメージで他紙と並んでいる。宮城県名取市の追悼式で、母と妹を失い、今年19歳になった浜田さんが取材に答えている。紙面のその下には、石巻市で息子を亡くした夫婦が、遺体が発見された場所に花を手向け、涙する姿。ところが、さらにその下になると、一転して「中国工業生産伸び鈍化」の記事。確かに大きなニュースではあるが、この並びには違和感を否めない。しかも、この記事に関連が付いていて、そちらは6面に飛ぶ。中国経済についての主要指標の解説、中国での販売台数を下方修正したホンダの話などが載っている。最初からここに記事全部を持ってくれば良かったのにと思うのは私だけだろうか。そうしなかった理由は、さっぱり分からない。こと、この日の1面に関しては、津波による犠牲と鎮魂たけでなく、原発関連の記事を持ってくることで、バランスが保たれると思うのだが(《朝日》は実際にそうしていた)。

4.式典を丁寧に報じようとすれば、こういう形になる。

 【東京】は、宮城県の遺族代表として政府主催の追悼式に出席した菅原彩加さんを大きく取り上げた。読み上げられたメッセージの全文を紹介し、彩加さんについての記事が横につけられている。彩加さんはこの春から慶応大学総合政策学部に進み、ジャーナリストを目指すという。2面には、同じく式典に参加した福島県と岩手県の遺族代表の言葉が全文掲載され、やはり、それぞれについて解説が付けられている。福島県代表の鈴木幸江さんは、浪江町請戸の実家に暮らしていた父母と弟を津波で失ったが、原発事故の影響で一ヶ月間、捜索も行われず、父母は今も行方不明のままだという。記事は、鈴木さん自身の言葉の中からは想像しきれない、もどかしさや不条理の感覚を説明している。岩手県代表の歯科医、内舘伯夫さんは介護施設で働いていた父を失った。自身は遺体の身元確認に当たり、「同級生や近所の人」を大勢確認して「それ以上、続けられなかった」と辛い経験を記者に語っている。

三人の遺族代表の言葉を全文掲載したのは《東京》だけだった。それぞれに遺族代表本人に対する取材で、式典での言葉を補うような作りにしたのは実に丁寧な扱いだと感じた。

2面には天皇の言葉(全文)と、安倍総理の式辞(要旨のみ)も掲載されている。天皇の言葉の中には、教訓として「日頃の避難訓練と津波防災教育がいかに大切かを学」んだことと、その教訓を子孫に伝えていくことの重要さの指摘があり、他方、安倍氏の言葉の中には、「震災の教訓を無にしない決意で、全土にわたって災害に強い強靱な国作りを進めていきます」という、公共事業に関わると思われる部分があった。


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