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3月18日のuttiiの電子版ウォッチ(無料版) [uttiiの電子版ウォッチ]

【20150318】

【はじめに】

 戦後の秩序がガラガラと音を立てて壊れていく、いや、壊されていくのを目撃している実感がある。安保法制だ、日米防衛協力ガイドラインだ、と一つ一つを見てしまえば、何か当然のことが淡々と進められているようにも感じられるだろうが、進行しているのは容易ならざる事態だ。新聞各紙の論調に、そのような時代感覚が反映しているかどうか、その点が非常に気がかりだ。憲法秩序の破壊にいそしむ政権に対して立ち向かうのか協力するのか、あるいは率先して自らも破壊の側に立つのか。貴紙はどっちだ?と、新聞各紙は常に問いかけられているように思う。いよいよ国会で最重要の審議が始まろうかという今、3月18日のuttiiの電子版ウォッチを御覧下さい。

 【ラインナップ】

1.自衛隊は米軍と一体化して世界中で戦争に参加するのか。

2.与党協議の結果を見れば公明党が歯止めでないことぐらい誰にでも分かる。

3.廃炉か延長か~危険な再稼働路線まっしぐらの政府と電力会社

4.損得勘定で廃炉決定

1.自衛隊は米軍と一体化して世界中で戦争に参加するのか。

【朝日】の1面トップは「米軍に弾薬提供可能に」との見出しで、日米防衛指針(ガイドライン)の改訂方針を政府が決めたと報じている。4月にも2プラス2で合意するという。中身はひどいものだ。米軍への後方支援を大幅に拡大して、米軍への弾薬提供や戦闘機への給油も可能に。さらに「地理的制約」を取り払い、地球上どこでも米軍への協力ができるようにするという。「連絡体制」も強めるのだそうで、「防衛省の地下にある中央指揮所に米軍幹部が常駐する方向で調整中」だという。なんだ、その「方向」って。

後方支援と言うが、文字通り、「米軍の行う戦争に参加する」ことそのものではないか。「連絡体制」に至っては噴飯ものだ。これでは「連絡」ではなく米軍の「指揮下に入る」のと変わらない。《朝日》は、短いリードの中で、「軍事力を強める中国に対抗する狙いがある」とアッケラカンと書いているが、この新聞社、大丈夫だろうか。さすがに3面には「自衛隊・米軍、進む一体運用」との見出しで関連記事があり、「ちょっとは批判的なのかな?」と思ったが、これが全然違っていて、安倍内閣が進めている安保法制の「整備」とガイドラインの改定を「両輪」として淡々と記すのみ。「客観報道」と言いたいのかもしれないが、これでは「他人事報道」だ。

このままでは、自衛隊が「自衛のための戦力」から、「米軍日本人部隊」へと看板を掛け替えることになりかねない。《朝日》の記者や編集担当者は、それを是認するのだろうか。ごく自然に、「腑抜け」という言葉が脳裏に浮かぶ。

 《朝日》の1面は他に、「老朽原発廃炉時代へ」の記事(「本格的な廃炉時代に入った」「電力会社が廃炉しやすい条件が整った」「どこまで廃炉が進むかは見通せない」などと超テキトーな解説付き)、任天堂とDeNAの提携話、アイシンが開発した楽しい電動三輪車の写真付き記事とあり、日本の独立が大きく毀損される事態を迎えているという、一番大事なトップ記事のインパクトを下げる効果を遺憾なく発揮している。

15面のインタビュー記事で、ローマ生まれの対テロ資金洗浄問題コンサルタント、ロレッタ・ナポリオーニ氏は、「ISに対して、日本は局外にとどまるのが最良の選択」と断言している。だが、自衛隊中央指揮所に米軍人が入り込み、地球上どこでも米軍の戦争に参加できる法体制を作り上げようとする安倍政権の下では、「局外」どころか、自衛隊員とISの直接戦闘が行われる事態も覚悟しておいたほうがよいだろう。

2.与党協議の結果を見れば公明党が歯止めでないことぐらい誰にでも分かる。

【読売】は、「後方支援に恒久法合意」「安保法制自公が原案」との見出しで、《読売》が「入手」した原案なるものを報じている。《朝日》流に言うと、ガイドラインと並ぶクルマの「両輪」のもう一方ということになる。正式合意は20日だという。これで、あとは国会で法案を通せばよしということのようだ。「入手」というのは、自民党公明党の側からすれば「リーク」だった可能性が高い。であれば、与党が《読売》を使って、憲法9条はもうなくなったのも同然、戦争への道は不可逆的と国民に思い知らせようというのだろう。安倍政権に批判的な人々からすれば、公明党は全く「歯止め」にならないどころか、安倍政権の進む「戦争への道」を掃き清める役割さえ果たしていることに、改めて気付かされる思いだろう。

 他の一面記事。《朝日》と同じく、任天堂とDeNAの提携話を載せるが、こちらは左肩により大きな扱い。原発については、《朝日》が「廃炉」を扱っていたのに対し、《読売》は見出しで「高浜、美浜3基 延長申請」とし、もちろん記事中には廃炉を含めて書いているのだが、ニュース価値は「延長申請」に置くという異様さ。問題のある原発は廃炉にし、安全なものは40年を超えて使い続ける、いわば「選択と集中」によって、安全を図りながらエネルギー供給に責任を持って取り組んでいく云々、という話のようだ。完全に、現時点での原子力ムラの理屈になっている。もともと《読売》は原子力ムラの一部と思っておいた方がよいのだが。

3.廃炉か延長か~危険な再稼働路線まっしぐらの政府と電力会社

【毎日】は、《読売》と同様、「安保法制 20日合意へ」と題して、与党協議が最終合意を迎えるニュースをトップに。一面全体では、原発と任天堂DeNA提携話を加えた本日の「三点セット」のようになっている。ただ、《毎日》の書きぶりは《読売》よりも分かりやすい。「周辺事態法から「周辺」概念を外すこと」、「他国軍を後方支援する恒久法の制定」などで合意があり、「自衛隊派遣に国会の事前承認を義務づけるか」については最終調整が残っていると、内容を整理。

 原発については、関電と原電が「廃炉 再稼働にらみ」との見出し。見出しに「再稼働」の3文字を入れたのは優れている。原発を運用してきた電力会社からすれば、現在全て止まっている原発をどこまで再稼働できるかが経営上の最大関心事。廃炉の動き、延長申請の動きとも、この再稼働を見据えてのことに他ならない。3面の「クローズアップ2015」は、その老朽原発廃炉決定の分析をし、「規模小さくコスト高」という経済的な理由から廃炉を決めたとの電力会社の説明を解説している。規模が比較的大きく、新規制基準による安全対策をしても採算が見込める原発は延長申請するというわけだ。新規制基準に合致しさえすればよいのだとすれば、安全を第一義的に考えての判断ではないと言える。原子力規制委員会は新規制基準について、「基準を満たした原発も事故を起こしうる」と言っているのだから。他方、廃炉によって、原発関連の交付金などの収入が激減してしまう自治体の問題も深刻だ。一橋大学の橘川武郎教授の言葉が妙に生々しい。「生き残るには廃炉作業で雇用を生み、送電網を利用して火力発電所を誘致し、使用済み燃料を貯蔵して保管料を得るしか道はない」と。

4.損得勘定で廃炉決定

【東京】の1面トップの見出し、「不適切記載 修正求める」とあるのは、シェアハウスなどに住むひとり親の女性に対して児童扶養手当の支給が打ち切られていた問題の続報。同じ住所にいる男性を、何の根拠もなく「事実婚」の相手と見なすという、全く理不尽な行政行為について、《東京》が指摘し、厚労省も是正するよう指示を出していた。それ以降も、一部自治体のHP上には、「同じ住所に独身男性がいるだけで支給対象外になる」と読める記載があったようで、厚労省が修正を求めたということだ。

 原発の廃炉について、左肩に処分場探しや立地自治体財政を巡って「廃炉後の対策 遅れ」との記事。《毎日》のクローズアップと似た趣旨の記事だが、2面の関連記事の見出しは「損得勘定で廃炉決定」とさらにストレート。識者のコメントも、「(福島第一原発については)地域対策として福島県への交付金を続けることにした。他の原発の廃炉にも適用できるはずだ」(清水修二福島大学教授)とか、「政府は再稼働に重点を置いてきたため、廃炉を円滑に進めるための対策に真剣に取り組んでこなかったのではないか」(伴英幸原子力資料情報室共同代表)とクリアーかつ厳しい。

 27面の「本音のコラム」。今日の担当は文芸評論家の斎藤美奈子さん。参議院予算委員会で「八紘一宇」を推奨しちゃった自民党の三原じゅん子議員を取り上げている。痛快な文章の白眉は、「侵略戦争を正当化したいという願望がなければこんな無恥な発言は出ないはず」という部分か。全く同感。小生の推測は、三原氏は安部晋三総理に褒めてもらいたくて、にわか勉強の「成果」を披露してしまったのではないかと。笑うべき議員サマだ。了。


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