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 【20150319】

【はじめに】

 各紙、1面で、安保法制に関する自公の与党協議が終わったことを報じている。《読売》《毎日》《東京》三紙が1面トップ、《朝日》は1面左肩に掲載、いずれも関連記事や特集を他面に置いて補う形になっている。

 見出しだけで見ると、各紙同様だが、《東京》だけが記者による解説に「立憲主義軽視のまま」と批判的なトーンを滲ませている。1面で論点を明示する報道姿勢が際立つ同紙の特徴が、こういうところにも見て取れる。さて、以下に記事の詳細を見ていこう。

【ラインナップ】

1.安保法制を見る視点、自公間の軋轢だけで本当に大丈夫?

2.言葉の端々に自民党臭が漂ってくる《読売》の安全保障記事。

3.「日米安保条約を逸脱するような政策転換」と見抜いた《毎日》の慧眼。

4.「憲法九条の平和主義を変質させかねない重大な問題」というあまりに正しい評価。

1.安保法制を見る視点、自公間の軋轢だけで本当に大丈夫?

【朝日】の1面トップは「チュニジア襲撃 19人死亡」。首都チュニスで国会議事堂に隣接する博物館が武装グループに襲撃され、外国人観光客17人を含む19人が死亡、武装グループの2人が射殺され、一人が逮捕されたという。犯人たちは一時人質を取って立てこもったという。イスラム過激派と見られている。10面国際面に関連記事。チュニジアが、2011年の「アラブの春」の先駆けとなり、長期独裁政権を崩壊させた国であることが強調されている。日本人観光客が犠牲になっているようでもあり、尾を引く問題となるだろう。各紙も場所は違えども、扱っている。

 1面左肩には各紙がトップに掲げる安保法制の与党協議終了についての記事が「安保法制 自公が実質合意」「あす正式決定」「5分野方向性示す」との見出しのもとに置かれている。政府は「5月中旬にも関連法案を国会に一括提出する方向だ」としている。記事は5分野の内容などを展開するが、批判的なトーンは微塵もない。4面の特集記事では、「後方支援」「集団的自衛権」「国際平和協力」の三論点について、それぞれ、自衛隊の活動範囲を広げたい自民党と歯止めを求める公明党の軋轢という視角で整理し、「両者が折り合えなかった課題は4月の法案作成時まで先送りされ、あいまい決着となった」としている。だが、たとえば「国際平和協力」に関して、「国連決議に基づくものであることまたは関連する国連決議等があること」とされ、官僚の常套手段である「等」が際限のない拡大を保証しているように読める。公明党は「法案を作るときに逆転する」としているらしいが、本当は細部に至るまで決着しているのではないかとの疑念を持つ。統一地方選が終わるまでその点は秘密にして、終わった途端に「騙された!」とガッカリしてみせれば総てうまくいくというシナリオがあるのではないだろうか。昨年7月の閣議決定に際して、高村・北側を中心とするウラ会議が大活躍したことを、《朝日》は連載で報じているのだから、少しは自分たちの開拓した新知識を、記事を書くときにも利用したら良いのにと思う。

 この4面記事が「自公間の軋轢」のみに注目している以上、仕方がないことかもしれないが、記事中、どこを探しても「違憲」とか「立憲主義に反する」「日米安保条約を逸脱する」というような次元の批判点が示されていないことは、権力を監視する役目を担うメディアとして、明らかに「異常」なことと映る。昨日は「腑抜け」という言葉が浮かんだが、今日もまた同様だ。

2.言葉の端々に自民党臭が漂ってくる《読売》の安全保障記事。

【読売】の1面トップ、「安保法制実質合意」の記事については、微妙な言い回しに注意を払いたいと思う。まず、両党が合意したのは安全保障体制の「全体像」。細部はこれから詰めることを示唆している。また、5分野のうち、集団的自衛権に関しては、わざわざ「集団的自衛権の限定行使」と表現。全面的な行使ではないとの含意は公明党に対する気遣いか、そうでなければ自民党の口惜しさの表現か。さらに、リードの最後の部分、「(法案が)成立すれば日本の安全保障政策上の制約の多くを解消する大きな転換点になる」という書き方には、これまで自衛隊の活動が抑えられてきたことは、「制約」であり、今回の法整備はその制約からの「解放」を意味するとの含意、つまりは法整備を歓迎するとの姿勢が覗く。

*このメルマガでは、「含意」とか「底意」という言葉を多用することになる。「含意」は「意味」と全く同じものとして使われることも多いが、「表面に現れない意味」として使われる。ある言葉や表現を使用するに至った若干深めの事情を指していることもある。さらに「底意」(そこい)は「心の奥に潜む考え」のことで、記者や編集者が意識的にあるいは無意識的に、ある言葉や表現を選択するに当たって前提にしているものの考え方、素朴なイデオロギー、「常識」のようなものだ。彼らが「当たり前」と思い、あるいはそのように思い込んでいるものだ。「客観報道」を標榜する新聞各紙の記事から、これを炙り出すのが、本メルマガの目的の一つだ。

 全体としてみた場合、《読売》の記事は至って事務的で、淡々と合意内容について叙述している。恒久法制定にあたって公明党が求めていたとされる「国会による事前承認の義務づけ」については、「国会の事前承認を基本とする」という書き方に。事後承認を例外として認めるか否かの決着は、「4月中旬以降の法案審査に持ち越した」とする。3面の「スキャナー」は関連の解説記事。ここのトーンは、公明党が色々文句を言ったので、法体系が複雑になってしまい、後方支援を大改正する周辺事態法と恒久法の両方で定めるようなことになってしまったと、いわば「自民党の言う通りにすれば良いのに」と言わんばかりの底意が覗く。自民党の愚痴、というのが《読売》のモードなのかもしれない。

 もう一つの関連記事は4面に。国会での審議日程や審議時間に関する与野党の思惑が書かれている。

3.「日米安保条約を逸脱するような政策転換」と見抜いた《毎日》の慧眼

【毎日】は事実関係を中心に書いた一面記事に続き、5面の社説では「米軍支援の膨張を憂う」と題し、「日米安保条約を逸脱するような政策転換を憂慮する」と明確な安倍政権批判をしている。日米安保条約のもとに位置づけられた「周辺事態法」を逸脱するからこそ、インド洋での給油やイラク派遣などの際には、特別措置法が必要だったのだという論理は明快だ。もう一歩を進めて、周辺事態法から地理的制約を取り払い、後方支援の恒久法を定めることは、日米安保条約を破棄するに等しいと言って良かったのではないか。いずれにせよ、この論点は、《読売》はもちろん、《朝日》にも見受けられない。

 もう一つの関連記事は9面全部を使って「早わかり 安全保障法制」という図表付きの解説。《読売》のところで指摘した「集団的自衛権の限定行使」と似た「集団的自衛権の限定容認」と書いているところがある。これはおそらくは公明党に対する気遣いで、「立派に歯止めとして機能した」と評価されていると、公明党に受け取ってもらえるような書き方になっている。微妙な違いだが、「行使」は自衛隊が主語、「容認」は自衛隊による集団的自衛権行使を限定的にのみ認めてやる「誰か」が主語。その「誰か」は公明党なのかはたまた国民なのかは置いておくとして。

 全く関係ないが、17面の「坂村健の目」は凄い話。坂村教授は本当に冴えたひとだなあと思う。詳しくは書かないが、「自動システムと道徳」について坂村さんならではの明快な論理が展開されていて、小生も目が覚める思いだ。

         4.「憲法九条の平和主義を変質させかねない重大な問題」というあまりに正しい評価。

【東京】の1面トップの書き方は、「海外で武力行使法案に」との見出しから始まる。「派遣恒久法 事前承認「基本」」と、括弧を付けて「基本」としたのには、批判的な意図が込められている。そして既述の通り、大杉はるか記者による解説の見出しには「立憲主義軽視のまま」とある。「他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認めた昨年七月の閣議決定」を踏襲し、「憲法九条の平和主義を変質させかねない重大な問題を、改憲せずに一内閣による憲法解釈の変更で決めた安倍政権」と明快だ。(この当然の文章を、他の新聞で見ることができないのはなぜだろう。実に不思議なことだ。)また、与党協議についても、途中から合意を急いだのは、公明党が26日から始まる統一地方選を意識し、「延々と安保の議論を続ける姿は見られたくないと考えたのが大きな理由だ」という、取材に基づく深い洞察を示している。

 《東京》の名物コーナーの一つ「こちら特報部」は、三原じゅん子議員による「八紘一宇」発言をもとに、かなり綿密で広範な取材を展開。議員のにわか勉強が丸裸にされてしまっている。了。


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